「行ってこい!お前等なら勝てる!!」

 鬼頭の鼓舞はタイムアウト終了のブザーと共に。ベンチに座るメンバーの声援も受けて、俺等5人は戦場へと戻っていく。
 キュイとバッシュで奏でるフロア。(みなぎ)る闘志、炎を纏う10個の瞳。
 ボールが審判の手から敵へと渡ったその瞬間に、会場がピリリと刹那、痙攣した。

 シュパッ!っと放たれた豪速球。それが真っ直ぐと俺のマークマン、背番号4の手へ渡ると、彼は低いドリブルをしながらじりじりとコートの中央へ。

 敵はこの24秒間、シュートを放つ必要はない。俺等にボールを奪われさえしなければ勝てるこの試合(ゲーム)で彼等の選択を予想するならば、おそらくパスを回し続けることだろう。
 だったらそれを、カットするしかほかにない。

「くっそ……!」

 けれど敵は、俺等と同じく全国大会決勝戦出場のチーム。そう容易くいかないのがこのフィールド。俺へ焦点を当てたまま正確にパスを送られちゃあ、予測も推測もできたものではない。
 だから4番の指からボールが離れたその瞬間、飛んだ方向だけは叫んでおく。

「ナベ!!」