ドキドキドキドキ。

 緊張しているかと問われれば、がっつり緊張していると答えるだろう。

 ドキドキドキドキ。

 本当にやれるのかと問われれば、はっきり言って自信はないと答えるだろう。

 だけど確かに感じるのはこの鼓動。緊張よりも遥かに大きい躍動感に、俺のハートは胸の内で暴れている。
 それは仲間達も同じだと俺が思ったのは、皆の瞳が輝いていたから。

「おう、やってやろーぜ」

 そう言って、拳を突きつけてきたのは熊五郎(くまごろう)。彼の本名、熊田(くまだ)五郎(ごろう)の「田」だけを取った何のひねりもないあだ名だけど、見た目にはしっくりハマっている。

「勝つしかないべ、なあみんな」

 ははっと不敵な笑みを浮かべるのはアッキー。秋生(あきお)はいつも、追い詰められた時こそ笑う。

「ここまで来たらやるっきゃないっしょ〜!」

 真っ逆さまにしたドリンクを、ぷはーっと豪快に飲み干したナベが言う。マネージャーがそれを補充すれば、渡辺(わたなべ)はまたごくごくと喉を鳴らした。

大輔(だいすけ)、お前と毎日一緒にやってきたバスケも、こうして味方としてプレイできるのはあと24秒だけだ。最後の最後まで思いきり楽しもう」

 矢庭(やにわ)に俺へと握手を求めてきたのは、小学生時代からずっとバスケ仲間の陽平(ようへい)だ。
 俺は大きく頷くと、その汗ばんだ手のひらをしっかり握った。

「おう。てっぺんとって、笑顔でバスケ部卒業しようぜ」