再び動き出したタイマーを、(けみ)する余裕も俺にはない。
 鬼頭が叫ぶ。

「渡辺離すな!熊田も行け!」

 ナベと5番が争うボール。そこへ自身のマークマンを振り切った熊五郎が参戦すると。

「ぅおりゃああ!!」

 ラグビーにも似た迫力でなんとか熊五郎の手にボールが渡ったが、崩れたそのフォームを整えシュートまで持っていく術はないと判断した彼が選ぶは、目に見えた味方にパスを出すこと。

「だ、大輔!」

 再び俺へと戻ってきたボール。フリースローラインよりもリングから近い場所。

 次こそは。

 俺はフロアを急いで蹴った。