ピーー!と審判が笛を鳴らしたのは、試合が終了したからではない。相手の5番が俺に対してした、ファウルの知らせだ。
 俺の思惑通り、彼は最後の最後まで全力で臨んできてくれる男だった。

「こらあ坂本(さかもと)!なにしてんだ!!!」

 相手側のベンチからは、コーチの怒号が飛んでいた。何故なら俺はシュートを決めたし、そして5番のお陰でフリースローの権利も得たのだから。

 79対80。与えられたフリースローは1回。

「お前がここでファウルする必要なんかないんだよ!なにしてくれてんだ!!」

 無論、相手のコーチが言うことは正しいと思う。けれど5番はスポーツマンの中のスポーツマンかもしれないとも思った。
 試合に勝って勝負にも勝つ、みたいなさ。

「ワンショット!」

 フリースローラインに立った俺へ、審判から寄越されるボール。
 ダンダン、と2度小さくついてから姿勢を構える。これが俺のいつものやり方。

 緊張するな、落ち着け自分。いつも通り、いつも通り。

 これが成功すればプラス1点、そして同点。

 俺等にまだ未来はある。