ならばもう、賭けるしかない。

 キュッと一度、右足シューズで掴んだフロア。斜め後ろに反らした上体で、浮かせた左足を勢いよく前へ踏み出した。

「な!!」

 俺をマークする4番の目が丸くなったのは、おそらく彼の頭にはドリブルシュートなんて考えがなかったから。
 リングの近くからシュートを決めたところで得点は2点、そしてボールを手放すだけ。

 自ら敗北に向かって突き進むようなこんなシュートを、残り1秒しかないこのタイミングでやるのは大馬鹿者だ。

 だから4番は俺を追わなかった。べつにこれを決められたところで痛くも痒くもないから。

 でもね、4番。お前の仲間にもいただろう?キープしていれば良かっただけのボールを、残り時間も計算せずにゴールへと放った奴が。

 俺は敢えてそいつの元へと向かった。熊五郎は「え、なんでわざわざこっち来んの」みたいな顔をしていたが、これは俺の作戦だ。