着いた。
 変わらないな、凄く懐かしい。
 ここに来るのはいつぶりだろう。
 確か8年前の夏、世界は私から全てを奪っていった。
 楽しかったな、あの頃は全てがきらきらしてた。このなんにもない田舎を駆け回って、毎日飽きもせずに遊んでいた。私は両親を早くに失くして、おばあちゃんに育てられていた。だけど、りっくんがいたから私は親がいなくても笑顔でいられた。もちろん寂しいこともあったけれど、りっくんが私の涙を拭ってくれたから私は元気になれた。
「りっくん……」
 そう、りっくん。私の全て……。
 りっくんのおかげであの頃の私は笑えていた。大好きな人。
 もう一度会いたいなんて、毎日願ってるけどその願いが叶ったことはない。
 当たり前だ。もういないんだから。
 いくら、望んでももう届かないから。
 いいや。
 早く入ろう。
 ガラガラガラ……。
「おばーちゃーん、麗々愛(りりあ)だよー」
 ……ガチャ
「はーい」
 リビングに続くドアが開いておばあちゃんが廊下に出てきた。
 相変わらず、綺麗だなぁ。
 腰もまだシャンとしている。久しぶりに会ったからか、ただそれだけで心がぽかぽかしたような気がした。
「りりちゃん久しぶりだねぇーまぁ、お嬢さんになったこと、やっぱ美人さんねぇ」
「久しぶり。そんなことないよ?おばあちゃんも相変わらずだね。全然変わらない」
「あら、そうかしら?これでも歳を感じるのよぉ〜ささ、こんなとこでもあれだし上がって上がって!」
「ありがと。お邪魔します」
 そう言って、家に入ると、懐かしいおばあちゃん家の匂いがした。落ち着く匂い。懐かしい匂い。
 おばあちゃんについてリビングに入っていく。
「りりちゃん、ソファにでも座ってて、飲み物入れるわ。お茶がいい?それともりんごジュースかしら?」
「りんごジュース」
 久しぶりにあのジュースが飲める。嬉しい。
「了解よぉー」
 おばあちゃんテンション高いな……。
 ほんとに変わらない。
 でもやっぱりおばあちゃんと居るのは1番落ち着く。何気におばあちゃんは私が一番長く過ごしてる人だから。
 とか私がボーッとしてると、
「はーい。りんごジュースよぉー」
 私の前に、中にたっぷりの氷とりんごジュースが入ったグラスが置かれた。
 もちろん、ストローつきだ。
「ありがとう」
 そう言ってコップを持ち上げ、ストローに口をつける。
「美味しい……」
 あの味だ。私の一番好きな味。
「良かったわぁ、りりちゃんこのジュース好きだったでしょ?よく飲んでたわよねぇ、りっくんと一緒にね」
「そうだね、懐かしい。それよりおばあちゃんが元気そうでよかった」
 私があからさまに話を逸らしたからか、おばあちゃんが一瞬ハッとした様な顔してたけど、気付かないふりをした。
「そうねぇ、元気だったわよぉ。でもりりちゃんも元気そうで良かった!久しぶりにお顔が見れて嬉しいわ。でも、ここまで遠かったでしょ?」
「そうだね、結構かかったかも」
「そうよね、長旅お疲れ様」
「ん、ありがと」
「それもだけどぉ、りりちゃんの学校の話色々聞かせてよぉ」
 これを合図におばあちゃんの質問攻めが始まってしまった。
 それからしばらく、おばあちゃんの質問に答えまくった。
 話すのはあまり得意じゃないけど、おばあちゃんなら色んな話をしていいと思えるんだ。

 私の、心の内は除いて……。

 ある程度話が終わった後、私は荷物の片付けと寝る準備をして、早めに眠りについた。