受付係に案内され冒険者ギルドの受付窓口で冒険者登録をする2人。

「全さん、武仁さん、改めまして。私はカルカーンの冒険者ギルドの受付係マムと申します。早速お2人の冒険者登録とホークアイの討伐証明の買取をさせて頂きますね。まずはこちらをご記入下さい。私は買取の査定に入りますので記入が終わりましたらこちらのベルを鳴らしてお知らせ下さい」

そう言って受付係マムは冒険者登録用紙を2枚カウンターテーブル横から取り出した後、受付窓口奥の部屋へ籠った。
冒険者登録用紙には名前、年齢、職業、使用する武器、出身地を記入する欄がある。

全は職業に賢者とは書かずに魔法使い、使用する武器は魔法と書き、武仁は職業に勇者とは書かずに戦士、使用する武器に剣と書いた。
これはパワーバランスの齟齬を考えた全の提案だったが、2人を悩ませたのは出身地の項目だ。

「......おい、出身地って......日本で通じるのかよ?」

武仁は全に小さな声で聞く。

「僕もそこをどうするか考えていたところだ......」

2人がヒソヒソと話し合っていると、2人の方へ近づいてくる足音が背後でピタっと止まった。
ギルド内は賑わっていて2人は気がついていない。

「待たせたな! ワンドとの話は済んだかい? おっ、早速冒険者登録か。どれどれ......魔法使いと戦士か。......ん? 出身地が空欄だが......」

その声に2人は内心穏やかではなかったが、すかさず全は返答する。

「やあ、ケイン! 実は......僕らの風貌を見て騎士団副団長(・・・・・・)のケインともあれば多少は察しがついていただろうが....,.僕らは隠れ里出身でね......。里の事を口外する訳にはいかないんだ......。ほら、隠れ里、風の噂くらいには聞いたことがあるだろう? 騎士団副団長(・・・・・・)のケインともあれば......」

そう言うとケインは真顔で押し黙ったあと静かに口を開いた。

「......あ、ああ!! 隠れ里か......!? 確かに変わった格好をすると聞いた事があるような、ないような......。まあ、副団長ともなればかなり情報通にもなるからな。ははは! そう言う事ならカルカーンと記入すればいい。備考欄に身元保証人として俺のサインを添えれば大丈夫だ。」

自分で言った手前何も言えないが、ケインは人が良すぎて詐欺に合わないか心配になる全。
武仁もチョロすぎねえかこいつ......と言う眼差しをケインに向けているように見える。

ケインがサインをした事で記入も終わり受付のベルを鳴らそうとしたところでマムが奥の扉から出てきた。

「お待たせしました。......ちょうど登録書類の記入も終えられたのですね。......はい! 不備はありません! ではこちらが全さん、こちらが武仁さんの冒険者証になります。再発行には手数料がかかりますし、無くさないように管理下さいね」

差し出された冒険者証には、名前、職業とは別にDと言う表示がある。

「このDってのは何だ?」

武仁がつぶやくとマムは丁寧に説明をしてくれた。

「はい。そちらは冒険者ランクと言って、冒険者には上はSから下はEまで6段階のランク分けがされており、クエスト貢献度に応じてランクが上がって行きます。クエストはランクによって受けられるものが決まっており、全さんと武仁さんの場合ですと、一つ上のCランクまでのクエストを受けることが可能です。しかし、クエストの失敗が続いた場合は降格、素行が酷い場合は実績に関わらず最悪の場合除籍処分もあり得ますのでお気をつけ下さい」

「なるほどな。つうか俺らは今登録したばかりだろ? ならEランクなんじゃねーのか?」

そう武仁が続けると、マムは待ってましたと言わんばかりに食い気味に被せた。

「おっしゃる通りです! 通常はEランクスタートなのですが、お2人はBランクの魔物ホークアイを討伐されたと言う事で、特別待遇となりました! ギルマスも期待しているようでしたし、お2人のご活躍を楽しみにしております。」

そう言うと横で聞いていたケインは武仁を肘でツンツンっと突き、期待されてるぞ新人と言わんばかりにニヤっと笑った。

「それから、ホークアイの討伐証明の部位は額にある通称第三の目となります。正真正銘本物でした! こちらが今回のホークアイ討伐証明の査定結果になります、ご確認下さい」

そう言い終わるとトレーをカウンターに置いたマム。
トレーには金色のコインが40枚と銀色のコインが5枚のっている。
価値はわからないがとりあえずお礼を伝え、武仁はカバンの類を持っていない事から全が背負っていたリュックにコインをしまった。

ひと段落したところでケインが2人を外食に誘うが、全と武仁のこの世界に来てからの疲れも限界まで来ていた。
全と武仁はケインにお礼もかねて、それは明日必ずと約束をし別れ、ケインに教えてもらった宿屋へ向かった。