陽が暮れるまで狩りを続けた聖人と虎次郎。
 途中から猪の魔物ではレベルも上がりづらくなって来た為、竜の渓谷方面へ場所を変え、熊の魔物を狩り、狩り尽くすと大蛇の魔物にまで挑戦した。

 「聖ちゃん......もう暗くなって来たよ......僕もうヘトヘトだし、そろそろ切り上げようよお」

 肩で息をしながら虎次郎はその場に座り込む。

 「だらしがねぇなぁ! ......だが、確かに狩り続けで腹も減ったなぁ......魔物が落としたやつも数えてぇし、今日は切り上げるか」

 聖人がそう言うと、龍己が口添えする。

 「この辺りの魔物の方が強い、進路を戻してテントを張ろう」

 聖人と虎次郎も同意し、猪の魔物の出没エリアである、王都ボルディア方面まで馬を走らせ戻った。

 3人は簡易テントを張ると、雷属性生活魔法の電灯(ライト)を使用し、その灯りを頼りに各々が倒した魔物から得た討伐証明を数えながら干し肉を頬張る。

 「牙が......21に、毛皮が6と、ヘビ皮が3......」

 聖人が数えると、虎次郎も鞄から討伐証明を取り出した。

 「僕は、牙が33、毛皮が2と、ヘビ皮が1だよ! 数では買ったけど、流石聖ちゃんだね! 強い魔物は全然狩れなかったぁ」

 少し気を落とす虎次郎の肩を、ポンっと叩き、聖人は満足げに言った。

 「まぁ数ではお前の勝ちだ! レベルが上がったか見てみようぜ!」

 そう言いながら、ステータスウィンドウを開いた聖人と虎次郎のレベルは、確実に上がっていたものの、龍己に及ばない事実を目の当たりにした聖人は険しい顔をした。

 「22......」

 ぽつりと漏らした一言に虎次郎は、「え! 僕21だよ! やっぱり聖ちゃんは凄いなぁ!」、と素直に褒める。

 「......おい、龍。お前どうやったら91なんかに上がるんだよ?」

 聖人が少し不貞腐れながら龍己に聞いた。

 「......この世界に来て2日目に、厄災の芽を討伐したんだ。その時、同行してくれた人が俺を庇って亡くなった......。力不足だと思った......だから、7日目に2つ目の厄災の芽の討伐に出るまで、ずっと魔物と戦っていたんだ」

 それを聞いて虎次郎は胸が苦しくなり、切なげに龍己を見つめる。

 「お前、何日目だとか......日記でもつけてんのか!? 暇なやつだな! ......まぁ、それじゃあすぐには追いつけねぇか......。だが! ここからは俺のターンだからな! まぁ見てろ、数日ですぐに超えてやるからな!」

 聖人はそう息巻くと、龍己は「うん。それから、日記はつけてるよ」と返すと、「本当につけてんのかよ! 見せろ!」と聖人はゲラゲラと笑いながら、頬を赤らめる龍己から日記帳を取り上げる。

 しかし、龍己の日記は存外細かく記録されており、その日に何がありどう過ごしたかをはじめ、どの魔物が何を落とし、経験値がどれ程あるのかなどまで記されており、聖人と虎次郎にとっても有用な内容が多く記載されていた。

 「......お前って......オタク気質だよな」

 聖人が呟くと、「龍っちゃんは生真面目なんだよね!」と虎次郎がフォローした。

 「まぁいい、もう寝ようぜ! 明日はいよいよ王都だからな!」

 聖人がそう切り出すと、3人は「おやすみ」と交わすと、それぞれのテントに潜り込んだ。

 聖人は取り上げたままの龍己の日記を眺めながら、主に経験値の部分を見て計算している。
 どれだけ倒せば91なんて言うレベルに至るのか、それを考えている様だ。

 「......猪1匹で経験値が300......熊が600で、蛇が1000か......俺らは1レベル上がる毎に次のレベルアップに必要な経験値が50増えてくから......今で俺が稼いだ経験値が12900で......まじであいつ、一体どんだけ1人で戦ったんだよ......」

 聖人は独り言を呟きながら、戦いの疲れか、そのまま眠りに落ちたのだった。

 翌朝、夜襲に遭うこともなく無事に目覚め3人は、飲料水で顔を洗い口を濯ぐと、干し肉を齧りながらテントを片付け、馬に跨った。

 「さて、いよいよ王都! 行くぞ!」

 聖人が先陣を切り馬を走らせると、虎次郎と龍己も後を追った。

 途中で休憩を挟みながらも、昼頃には王都ボルディアへ辿り着いたが、入り口で門兵に止められてしまう。

 「どのような後用向きで?」

 門兵に尋ねられると、龍己が前に出る。

 「魔物を討伐している者だ。これらを......」

 そう言いながら討伐証明を見せると、門兵はその数に驚きながら食い気味に答えた。

 「冒険者の方でしたか! 登録証を無くされたのですか? それにしてもこの討伐証明の数......売るのですね、いつもお疲れ様です! お通り下さい」

 なぜだか門兵がにこやかに通してくれると、3人は足早に門を潜り王都ボルディアへ足を踏み入れた。

 「おい! 見ろよ! 教会とは違って賑やかだぞ! それにさっきの奴も意外といい奴だったな!」

 聖人が言うと、虎次郎が続ける。

 「うん! 凄いね! 色々見て回ろうよ! ......でも、冒険者って言ってたね、何のことだろう......?」

 龍己は、以前全と武仁に連れられて来た際に、はじめに行った冒険者ギルドの事を思い出しながら、2人にそれとなく話す。

 「門兵の人は、これを見て売るのかと言っていた......きっと、これを売れる場所があるんだ。教会は俺たちに金銭は渡さないし、折角なら売ってご飯でも食べないか......」

 それを聞いて、聖人も虎次郎も賛成の様子で、聖人も楽しそうに言った。

 「確かに、教会内で金銭なんかいらねぇし、何にも困らねぇが......外に出りゃやっぱし必要だよな! 冒険者って言ってたし、それっぽいとこ探そうぜ!」

 それから3人はそれらしき建物を探して歩き、少しして龍己が冒険者ギルドを見つけると、聖人と虎次郎に声をかけ、ギルドの扉を開いた。