「なっ、お、お前は……!?」
「どうして、こんなところに……!?」
俺の姿を見て、ドグとフリスが動揺をあらわにした。
一方で、ネコネは安堵した表情を浮かべている。
「ありがとうございます、スノーフィールド君」
「まだ礼を言うには早いだろう」
「???」
アリンは、訳がわからないという様子で不思議そうにしていた。
ただ、説明は後だ。
「貴様! 何者ぐはぁ!?」
アーニとかいう貴族だったか?
そいつが騒いだので、うるさいので無詠唱魔法で黙らせた。
続けて、ゴーケンにも炎弾を叩き込むのだけど……
「へぇ」
パァンッ! と弾けるような音と共に、炎弾が消えてしまう。
今、なにをした?
あらかじめ防御魔法を展開していたのか。
それとも魔道具か。
どちらにしても、俺の知らない技術だ。
興味深い。
「なるほど。先程からやけに騒がしいと思っていましたが、君の仕業ですか。君は?」
「レガリアさんの……えっと、ネコネさんのクラスメイトだ」
ネコネもアリンもどちらもレガリアなので、今回は名前で呼ぶことにした。
「ふむ、クラスメイト? そのような者が、なぜここに?」
「友達がピンチなんだ。見過ごせないだろう?」
「なるほど。正義の味方に憧れる愚者、というわけですか」
ゴーケンはにこりと笑い……
パチンと指を鳴らす。
隣の部屋から大量の兵士がやってきた。
あっという間に俺を包囲する。
ネコネとアリンを捕らえているから、これくらいの用意はしているか。
まあ、大したことはないだろう。
いずれも平凡なレベルで、大したプレッシャーを感じない。
「君はなかなかの力を持っているようですが、これならどうですか?」
「どうもこうも、なにも障害にはなっていない。邪魔者は蹴散らす。それだけだ」
「ふむ……ハッタリというわけではなさそうですね。それなりの力を持っていて、自信があるというわけですか」
ゴーケンは余裕を失わない。
彼にとって、この程度、ピンチでもなんでもないのだろう。
実際、対峙しているのは学生だからな。
なかなか脅威に思うことはできないだろう。
「さて……君がどこの誰か詳しくは知らないが、私を敵に回してタダで済むと思っているのかね?」
「と、いうと?」
「なるほど、確かに君は強い。ここまで一人で辿り着くだけのことはある。しかし、君は本当の強さを知らない」
「へぇ」
問答無用で叩き潰してもいいのだけど、ゴーケンの言う本当の強さに興味を覚えた。
素直に話を聞くことにする。
「強い魔法を使うことができる……それは素晴らしいことだ。しかし、個人の力では限界がある。全てに手が届くことはない。だが、それを可能とする力がある……それこそが権力だ」
「権力?」
「そう、権力だ。君のような平民では成し遂げることができないことも、私のような貴族ならば成し遂げることができる。単純な力の問題ではないのだ。さらにその上の段階の話をしているのだよ」
「ふむ」
「そう、君は無力だ。平民である君にはなにもできない。例えば、私が一つサインをするだけで、君はこの国で生活することはできなくなる」
事実、その通りだろう。
ゴーケンほどの立場にいる者ならば、無茶を成し遂げることができる。
「牢に放り込むことも簡単だ。生きるために必要な権利を剥奪してもいい。奴隷に堕とすこともできる……なんでも可能なのですよ」
「それで?」
「ここまで言えばわかるだろう? どうやら王女達を助けに来たようだけど、バカな真似はやめておくことだ。社会的に死にたくないだろう?」
ゴーケンはニヤリと笑い、そう忠告をしてきた。
確かに、ヤツの言う通りだ。
権力というものは圧倒的な力を持つ。
下手に逆らえば、そこで人生終了。
死ぬよりも厳しい状況に追い込まれるだろう。
ただ……
「そんなこと知るか」
「……なんだと?」
ヤツは一つ、大きな勘違いをしている。
「あんたの持つ力は理解した、というか、最初から理解しているよ。貴族にケンカを売る。それは、国にケンカを売るようなものだ」
「理解しているのなら、バカな真似はやめたまえ。社会的に死にたくないだろう?」
「だから、そんなこと知るか」
「……なんだって?」
「確かに、俺は人間社会の中で生きている。その枠組の中にいる。ただ、この国に属した覚えはない。俺に命令できるのは俺だけだ」
「やれやれ、なにも理解していないな。それはつまり、この国を敵に回すということだ。そんなことをして勝てるとでも?」
「勝てるさ」
即答。
そして、迷いなく言い放つ。
「この国の全てを相手にしても、俺が勝つ」
「なっ……」
「あと、貴族だろうが権力だろうが、そんなこと知らん。権力があるから従え? バカ言うな。そんなめんどくさいこと、するわけないだろう。俺は、俺のやりたいようにやる。それを邪魔するなら、みんな敵だ。そして……敵は叩き潰す」
権力の力は大きい。
絶大と言ってもいい。
その国に生きる者にとって、決して逆らうことはできない。
ただ、俺はこの国なんてどうでもいい。
いつでも出ていっていいし、なんなら敵対してもいい。
そして、叩き潰す覚悟がある。
それを成し遂げる自信がある。
そんな俺にとって、ゴーケンの持つ権力はまるで意味がない。
立っている舞台が違うのだ。
「貴様、本当にこの国を敵に回すつもりか……正気か!?」
「だから、そんなこと知るか。俺がやるべきことは、ネコネとアリンを助けることだ」
二人を見る。
ネコネとアリンはぽかんとした様子で……でも、どこか嬉しそうにしていた。
「そんなわけで、俺に倒されてくれ」
「正気か!? この私を敵に回すということは、この国の貴族の大半を敵に回すということだぞ!? この国で生きていくことなど不可能に……」
「だから、どうでもいいんだよ」
そんなことよりも、ネコネとアリンだ。
「そんなわけで……エアリアルシールド」
ネコネとアリンを魔力の盾で包み込む。
それから、魔法をもう一つ。
「インフェルノ」
「どうして、こんなところに……!?」
俺の姿を見て、ドグとフリスが動揺をあらわにした。
一方で、ネコネは安堵した表情を浮かべている。
「ありがとうございます、スノーフィールド君」
「まだ礼を言うには早いだろう」
「???」
アリンは、訳がわからないという様子で不思議そうにしていた。
ただ、説明は後だ。
「貴様! 何者ぐはぁ!?」
アーニとかいう貴族だったか?
そいつが騒いだので、うるさいので無詠唱魔法で黙らせた。
続けて、ゴーケンにも炎弾を叩き込むのだけど……
「へぇ」
パァンッ! と弾けるような音と共に、炎弾が消えてしまう。
今、なにをした?
あらかじめ防御魔法を展開していたのか。
それとも魔道具か。
どちらにしても、俺の知らない技術だ。
興味深い。
「なるほど。先程からやけに騒がしいと思っていましたが、君の仕業ですか。君は?」
「レガリアさんの……えっと、ネコネさんのクラスメイトだ」
ネコネもアリンもどちらもレガリアなので、今回は名前で呼ぶことにした。
「ふむ、クラスメイト? そのような者が、なぜここに?」
「友達がピンチなんだ。見過ごせないだろう?」
「なるほど。正義の味方に憧れる愚者、というわけですか」
ゴーケンはにこりと笑い……
パチンと指を鳴らす。
隣の部屋から大量の兵士がやってきた。
あっという間に俺を包囲する。
ネコネとアリンを捕らえているから、これくらいの用意はしているか。
まあ、大したことはないだろう。
いずれも平凡なレベルで、大したプレッシャーを感じない。
「君はなかなかの力を持っているようですが、これならどうですか?」
「どうもこうも、なにも障害にはなっていない。邪魔者は蹴散らす。それだけだ」
「ふむ……ハッタリというわけではなさそうですね。それなりの力を持っていて、自信があるというわけですか」
ゴーケンは余裕を失わない。
彼にとって、この程度、ピンチでもなんでもないのだろう。
実際、対峙しているのは学生だからな。
なかなか脅威に思うことはできないだろう。
「さて……君がどこの誰か詳しくは知らないが、私を敵に回してタダで済むと思っているのかね?」
「と、いうと?」
「なるほど、確かに君は強い。ここまで一人で辿り着くだけのことはある。しかし、君は本当の強さを知らない」
「へぇ」
問答無用で叩き潰してもいいのだけど、ゴーケンの言う本当の強さに興味を覚えた。
素直に話を聞くことにする。
「強い魔法を使うことができる……それは素晴らしいことだ。しかし、個人の力では限界がある。全てに手が届くことはない。だが、それを可能とする力がある……それこそが権力だ」
「権力?」
「そう、権力だ。君のような平民では成し遂げることができないことも、私のような貴族ならば成し遂げることができる。単純な力の問題ではないのだ。さらにその上の段階の話をしているのだよ」
「ふむ」
「そう、君は無力だ。平民である君にはなにもできない。例えば、私が一つサインをするだけで、君はこの国で生活することはできなくなる」
事実、その通りだろう。
ゴーケンほどの立場にいる者ならば、無茶を成し遂げることができる。
「牢に放り込むことも簡単だ。生きるために必要な権利を剥奪してもいい。奴隷に堕とすこともできる……なんでも可能なのですよ」
「それで?」
「ここまで言えばわかるだろう? どうやら王女達を助けに来たようだけど、バカな真似はやめておくことだ。社会的に死にたくないだろう?」
ゴーケンはニヤリと笑い、そう忠告をしてきた。
確かに、ヤツの言う通りだ。
権力というものは圧倒的な力を持つ。
下手に逆らえば、そこで人生終了。
死ぬよりも厳しい状況に追い込まれるだろう。
ただ……
「そんなこと知るか」
「……なんだと?」
ヤツは一つ、大きな勘違いをしている。
「あんたの持つ力は理解した、というか、最初から理解しているよ。貴族にケンカを売る。それは、国にケンカを売るようなものだ」
「理解しているのなら、バカな真似はやめたまえ。社会的に死にたくないだろう?」
「だから、そんなこと知るか」
「……なんだって?」
「確かに、俺は人間社会の中で生きている。その枠組の中にいる。ただ、この国に属した覚えはない。俺に命令できるのは俺だけだ」
「やれやれ、なにも理解していないな。それはつまり、この国を敵に回すということだ。そんなことをして勝てるとでも?」
「勝てるさ」
即答。
そして、迷いなく言い放つ。
「この国の全てを相手にしても、俺が勝つ」
「なっ……」
「あと、貴族だろうが権力だろうが、そんなこと知らん。権力があるから従え? バカ言うな。そんなめんどくさいこと、するわけないだろう。俺は、俺のやりたいようにやる。それを邪魔するなら、みんな敵だ。そして……敵は叩き潰す」
権力の力は大きい。
絶大と言ってもいい。
その国に生きる者にとって、決して逆らうことはできない。
ただ、俺はこの国なんてどうでもいい。
いつでも出ていっていいし、なんなら敵対してもいい。
そして、叩き潰す覚悟がある。
それを成し遂げる自信がある。
そんな俺にとって、ゴーケンの持つ権力はまるで意味がない。
立っている舞台が違うのだ。
「貴様、本当にこの国を敵に回すつもりか……正気か!?」
「だから、そんなこと知るか。俺がやるべきことは、ネコネとアリンを助けることだ」
二人を見る。
ネコネとアリンはぽかんとした様子で……でも、どこか嬉しそうにしていた。
「そんなわけで、俺に倒されてくれ」
「正気か!? この私を敵に回すということは、この国の貴族の大半を敵に回すということだぞ!? この国で生きていくことなど不可能に……」
「だから、どうでもいいんだよ」
そんなことよりも、ネコネとアリンだ。
「そんなわけで……エアリアルシールド」
ネコネとアリンを魔力の盾で包み込む。
それから、魔法をもう一つ。
「インフェルノ」