「むかつくむかつくむかつく……!!!」
夜。
一人、部屋で過ごすアリンは、ふてくされた顔をしていた。
姉につきまとう怪しい男に決闘を申し込み、完膚なきまでに叩きのめす。
そして、二度と姉に近づかないように約束させる。
あるいは、学院から追い出す。
そうなるはずだったのに……
「まさか、バハムートと契約をしているなんて……」
伝説の存在を使役しているなんて話、聞いたことがない。
想像以上……いや。
予想の遥か斜め上をいっている。
「……いったい、何者なのかしら?」
突然、学院にやってきた異端児。
貴族を返り討ちにして、鮮烈なデビュー。
その後も、貴族との決闘に勝利するなど、色々と話題には事欠かない。
「うーん」
気がつけば、アリンはジークのことばかり考えていた。
彼が姉に近づく不埒者ということは忘れて、その正体などが気になるように。
「よくよく考えれば、ちゃんと話したことはないのよね……彼、どんな人なのかしら?」
姉の敵。
でも、どんな人なのか、その性格が気になる。
どうしたらいいのだろう?
アリンはぬいぐるみを抱えて、ため息をこぼす。
「あら?」
小さく扉がノックされた。
一人でなかったら気づかないほど小さな音だ。
「こんな時間に誰かしら……はーい」
アリンは返事をして、玄関の扉を開ける。
しかし、誰もいない。
「……いたずら? もうっ」
ぷりぷりと怒りつつ、玄関の扉を締めた。
鍵を閉めて、部屋に戻ろうとして……
「っ!?」
振り返ったところで、いつからそこにいたのか、黒尽くめの男と目が合う。
アリンは反射的に悲鳴をあげようとするが、口を塞がれてしまう。
さらに腹部を殴られてしまい……
「……ぅ……ぁ……」
アリンの意識はゆっくりと闇に落ちていった。
――――――――――
寮から学院は、歩いて十分ほどだ。
学院は大きく、無数の施設があり……
そして、たくさんの生徒を収容する寮も大きい。
そのため、敷地を確保するために離れた場所に建てられた。
朝。
目を覚ますためにのんびり歩くこともできるため、俺はこの距離感が気に入っているのだけど……
「……」
ふと、ネコネを見つけた。
暗い表情をしてて、時折、周囲をキョロキョロと見ている。
「レガリアさん」
「あっ……スノーフィールド君」
「おはよう」
「おはようございます……」
やはり元気がない様子だ。
「どうかしたのか?」
「あ、えっと……スノーフィールド君は、アリンを見ませんでしたか?」
「いや、見ていないが」
「そう、ですか……昨夜から連絡が取れなくて、気になってしまって」
アリンが消えた?
そういえば、今朝はなにもなかったが……
ふむ。
――――――――――
学院に到着してネコネと別れると、その足で学院長室へ向かった。
ネコネと離れることになるが、四六時中一緒にいるわけじゃない。
それに、学院で襲うバカもそうそういないだろう。
……しかし、今回はそのバカが現れた可能性がある。
その確認をしておきたい。
「……と、いうわけなんだが、なにか心当たりはないか?」
「むう」
リーゼロッテは難しい顔に。
笑い飛ばされる展開を予想していたが……
これは、洒落にならない事態に発展している可能性があるな。
「……まあ、よいか。元々、お主にも協力を頼むするつもりじゃったからな」
「っていうことは、なにか起きたんだな?」
「当たり前だが、他言無用じゃぞ? ……第四王女アリン・レガリアが誘拐された可能性がある」
リーゼロッテ曰く……
昨夜、侵入者を探知する結界が反応した。
同じく、アリンの護衛が倒れて……
そして、アリンが消えた。
「どう考えても誘拐だな。殺したいなら、その場でやればいい。アリンの立場を考えると、犯人の候補なんて腐るほどいるだろう」
「妾も同じ考えじゃ。何者かが第四王女を誘拐して、いずれ、要求を突きつけてくるじゃろう。それが国になのか学院になのか、それはわからぬがな」
「犯人の情報は?」
「わからぬ。国と連携して捜査を進めているものの、なかなか……な。おかげで徹夜じゃが、まだ情報を掴めておらん」
「それで俺の出番か」
「うむ。お主なら、色々と便利な魔法を持っているじゃろう?」
「待て。俺の協力前提で話をするな」
「なんじゃ、断るつもりなのか?」
「俺の立場も微妙なんだよ。俺は俺でやらないといけないことがある。それを疎かにして失敗したら、意味がないだろう?」
「むう」
ネコネの護衛が俺の任務だ。
敵が学院内部にまで入り込んでいるとなると、そちらを無視することはできない。
アリンのことは気になるが、ネコネの護衛の強化をするべきで……
「待ってください!」
扉が勢いよく開いて、ネコネが入ってきた。
夜。
一人、部屋で過ごすアリンは、ふてくされた顔をしていた。
姉につきまとう怪しい男に決闘を申し込み、完膚なきまでに叩きのめす。
そして、二度と姉に近づかないように約束させる。
あるいは、学院から追い出す。
そうなるはずだったのに……
「まさか、バハムートと契約をしているなんて……」
伝説の存在を使役しているなんて話、聞いたことがない。
想像以上……いや。
予想の遥か斜め上をいっている。
「……いったい、何者なのかしら?」
突然、学院にやってきた異端児。
貴族を返り討ちにして、鮮烈なデビュー。
その後も、貴族との決闘に勝利するなど、色々と話題には事欠かない。
「うーん」
気がつけば、アリンはジークのことばかり考えていた。
彼が姉に近づく不埒者ということは忘れて、その正体などが気になるように。
「よくよく考えれば、ちゃんと話したことはないのよね……彼、どんな人なのかしら?」
姉の敵。
でも、どんな人なのか、その性格が気になる。
どうしたらいいのだろう?
アリンはぬいぐるみを抱えて、ため息をこぼす。
「あら?」
小さく扉がノックされた。
一人でなかったら気づかないほど小さな音だ。
「こんな時間に誰かしら……はーい」
アリンは返事をして、玄関の扉を開ける。
しかし、誰もいない。
「……いたずら? もうっ」
ぷりぷりと怒りつつ、玄関の扉を締めた。
鍵を閉めて、部屋に戻ろうとして……
「っ!?」
振り返ったところで、いつからそこにいたのか、黒尽くめの男と目が合う。
アリンは反射的に悲鳴をあげようとするが、口を塞がれてしまう。
さらに腹部を殴られてしまい……
「……ぅ……ぁ……」
アリンの意識はゆっくりと闇に落ちていった。
――――――――――
寮から学院は、歩いて十分ほどだ。
学院は大きく、無数の施設があり……
そして、たくさんの生徒を収容する寮も大きい。
そのため、敷地を確保するために離れた場所に建てられた。
朝。
目を覚ますためにのんびり歩くこともできるため、俺はこの距離感が気に入っているのだけど……
「……」
ふと、ネコネを見つけた。
暗い表情をしてて、時折、周囲をキョロキョロと見ている。
「レガリアさん」
「あっ……スノーフィールド君」
「おはよう」
「おはようございます……」
やはり元気がない様子だ。
「どうかしたのか?」
「あ、えっと……スノーフィールド君は、アリンを見ませんでしたか?」
「いや、見ていないが」
「そう、ですか……昨夜から連絡が取れなくて、気になってしまって」
アリンが消えた?
そういえば、今朝はなにもなかったが……
ふむ。
――――――――――
学院に到着してネコネと別れると、その足で学院長室へ向かった。
ネコネと離れることになるが、四六時中一緒にいるわけじゃない。
それに、学院で襲うバカもそうそういないだろう。
……しかし、今回はそのバカが現れた可能性がある。
その確認をしておきたい。
「……と、いうわけなんだが、なにか心当たりはないか?」
「むう」
リーゼロッテは難しい顔に。
笑い飛ばされる展開を予想していたが……
これは、洒落にならない事態に発展している可能性があるな。
「……まあ、よいか。元々、お主にも協力を頼むするつもりじゃったからな」
「っていうことは、なにか起きたんだな?」
「当たり前だが、他言無用じゃぞ? ……第四王女アリン・レガリアが誘拐された可能性がある」
リーゼロッテ曰く……
昨夜、侵入者を探知する結界が反応した。
同じく、アリンの護衛が倒れて……
そして、アリンが消えた。
「どう考えても誘拐だな。殺したいなら、その場でやればいい。アリンの立場を考えると、犯人の候補なんて腐るほどいるだろう」
「妾も同じ考えじゃ。何者かが第四王女を誘拐して、いずれ、要求を突きつけてくるじゃろう。それが国になのか学院になのか、それはわからぬがな」
「犯人の情報は?」
「わからぬ。国と連携して捜査を進めているものの、なかなか……な。おかげで徹夜じゃが、まだ情報を掴めておらん」
「それで俺の出番か」
「うむ。お主なら、色々と便利な魔法を持っているじゃろう?」
「待て。俺の協力前提で話をするな」
「なんじゃ、断るつもりなのか?」
「俺の立場も微妙なんだよ。俺は俺でやらないといけないことがある。それを疎かにして失敗したら、意味がないだろう?」
「むう」
ネコネの護衛が俺の任務だ。
敵が学院内部にまで入り込んでいるとなると、そちらを無視することはできない。
アリンのことは気になるが、ネコネの護衛の強化をするべきで……
「待ってください!」
扉が勢いよく開いて、ネコネが入ってきた。