「本当に、妹が申しわけありません……」
放課後。
ネコネは、今日何度目になるかわからない謝罪をした。
アリンのことを話してから、ずっとこんな調子だ。
姉としての責任を感じているのだろう。
「別に、レガリアさんが気にすることじゃない」
「そう言ってもらえると……いえ、やはり申しわけないです」
姉としての使命感に燃えているらしい。
なにやら小声で、「説教」「躾」「おしおき」……なんて単語が聞こえてくる。
俺との決闘に勝ったとしても、アリンには悲惨な結末しか待っていないようだ。
敵? ながら同情してしまう。
「待たせたわねっ!!!」
ほどなくして、アリンが訓練場に現れた。
一人じゃない。
なぜか、学院長リーゼロッテ・エンプレスもいた。
「どうして学院長が?」
「ゆっくりしたかったのじゃが、この王女様に無理矢理連れてこられてのう……しかし! このような楽しそうなイベントに妾が参戦しないということはあるか? いや、ありえぬ! というわけで、審判を務めることにしたのじゃ」
「ヒマなのか?」
「ヒマ言うな!」
三角目で睨まれてしまった。
「まあいいか。それで、勝負の方法は決まったか? やっぱり、決闘か?」
「競い合うことは事実だけど、決闘はしないわ」
きちんと考えてきたらしく、アリンは余裕を持って答える。
「今回は、どちらが優れた魔法使い……お姉ちゃんにふさわしいかと決めるのが目的よ。決闘でもいいのだけど、それでは、魔法使いとして優秀というよりは、戦士としての優秀さを示すことになるわ。それじゃあ意味がないでしょう?」
「ふむ」
一理ある。
時間があるから、たっぷり考えてきたみたいだ。
「だから、こうしてみることにしたの」
アリンは、パチンと指を鳴らす。
その合図に応じて、少し離れたところに魔法人形が現れた。
魔法に対する高い耐性を持ち、威力を数値化してくれる。
練習の際、的として利用されることが多い。
「シンプルにいきましょう。それぞれ一発ずつ魔法を放ち、数値が上の方が勝ち。どう?」
「俺は構わない」
「決まりね。先手はあたしよ!」
特に同意はしていないのだが、アリンが前に出た。
まあ、この手の勝負に先手も後攻もあまり関係ない。
多少、プレッシャーがかかるかかからないか、その程度だ。
「ふふん、あたしの力を見せてあげる!」
アリンは自信たっぷりに、不敵な笑みを浮かべてみせた。
第四王女が使う魔法……いったい、どんなものなのだろう?
ものすごく興味がある。
決闘とかはどうでもいい。
早く魔法を見せてほしい。
「トランス」
アリンの体が淡く輝いた。
自身の魔力を一時的に増幅する魔法だ。
彼女は魔力を練り上げていく。
それは、とても洗練された動作だ。
絹の糸を織るような丁寧な動きで、魔力の欠片を繋いで、巨大な塊に仕上げていく。
そして……
「サモン、イフリート!!!」
灼熱の鱗と大きな角を持つ巨大な獣が顕現した。
獣はアリンの後方で待機して、従う姿勢を見せる。
召喚魔法。
契約を交わした魔物や幻獣、あるいは神獣を召喚して、一時的に力を借りるという特殊な魔法だ。
才能だけではなくて、並外れた修練がないと習得することができない、高等技術だ。
召喚魔法は俺も使えるが、使役するのは一匹だけ。
そいつの育成ばかりしていたら、他と契約する機会がなかったんだよな。
語りたい。
アリンと召喚魔法について、夜を徹して語りたい。
うずうずしてしまう。
……って、いけない。
今は決闘の最中で、魔法について語る場ではない。
「イフリート、あなたの力を見せなさい!」
「ガァアアアアアッ!!!」
アリンの命令に応じて、イフリートが吠えた。
巨大な獄炎が生成されて、魔法人形に向けて解き放たれる。
ゴォッ!!!
魔法人形が炎に包まれた。
普通なら、この後、威力を示す数値が最大『999』で示されるのだけど……
『239274273232927……』
三桁を超えて数字が表示されるというバグ。
そして……
ボンッ。
魔法人形が爆散した。
アリンが使役するイフリートの攻撃に耐えられなかったのだろう。
魔法人形は上級魔法を100発受けても耐えられる設計なのだけど……
アリンの召喚魔法は、上級魔法100発以上の威力を一撃で叩き出すことができる、というわけか。
おもしろい。
ますます興味が出てきた。
決闘ということを忘れて、延々と語り合いたくなってしまう。
「ふふんっ」
アリンがニヤリと笑い、こちらを見た。
どうだ、これがあたしの実力だ。
こんな真似、あんたには到底できないでしょう?
そんな感じで、挑発するような目を向けてくる。
なるほど、そう来たか。
色々と語りたい気持ちはあるものの……
でも、
「俺は負けず嫌いなんだ」
放課後。
ネコネは、今日何度目になるかわからない謝罪をした。
アリンのことを話してから、ずっとこんな調子だ。
姉としての責任を感じているのだろう。
「別に、レガリアさんが気にすることじゃない」
「そう言ってもらえると……いえ、やはり申しわけないです」
姉としての使命感に燃えているらしい。
なにやら小声で、「説教」「躾」「おしおき」……なんて単語が聞こえてくる。
俺との決闘に勝ったとしても、アリンには悲惨な結末しか待っていないようだ。
敵? ながら同情してしまう。
「待たせたわねっ!!!」
ほどなくして、アリンが訓練場に現れた。
一人じゃない。
なぜか、学院長リーゼロッテ・エンプレスもいた。
「どうして学院長が?」
「ゆっくりしたかったのじゃが、この王女様に無理矢理連れてこられてのう……しかし! このような楽しそうなイベントに妾が参戦しないということはあるか? いや、ありえぬ! というわけで、審判を務めることにしたのじゃ」
「ヒマなのか?」
「ヒマ言うな!」
三角目で睨まれてしまった。
「まあいいか。それで、勝負の方法は決まったか? やっぱり、決闘か?」
「競い合うことは事実だけど、決闘はしないわ」
きちんと考えてきたらしく、アリンは余裕を持って答える。
「今回は、どちらが優れた魔法使い……お姉ちゃんにふさわしいかと決めるのが目的よ。決闘でもいいのだけど、それでは、魔法使いとして優秀というよりは、戦士としての優秀さを示すことになるわ。それじゃあ意味がないでしょう?」
「ふむ」
一理ある。
時間があるから、たっぷり考えてきたみたいだ。
「だから、こうしてみることにしたの」
アリンは、パチンと指を鳴らす。
その合図に応じて、少し離れたところに魔法人形が現れた。
魔法に対する高い耐性を持ち、威力を数値化してくれる。
練習の際、的として利用されることが多い。
「シンプルにいきましょう。それぞれ一発ずつ魔法を放ち、数値が上の方が勝ち。どう?」
「俺は構わない」
「決まりね。先手はあたしよ!」
特に同意はしていないのだが、アリンが前に出た。
まあ、この手の勝負に先手も後攻もあまり関係ない。
多少、プレッシャーがかかるかかからないか、その程度だ。
「ふふん、あたしの力を見せてあげる!」
アリンは自信たっぷりに、不敵な笑みを浮かべてみせた。
第四王女が使う魔法……いったい、どんなものなのだろう?
ものすごく興味がある。
決闘とかはどうでもいい。
早く魔法を見せてほしい。
「トランス」
アリンの体が淡く輝いた。
自身の魔力を一時的に増幅する魔法だ。
彼女は魔力を練り上げていく。
それは、とても洗練された動作だ。
絹の糸を織るような丁寧な動きで、魔力の欠片を繋いで、巨大な塊に仕上げていく。
そして……
「サモン、イフリート!!!」
灼熱の鱗と大きな角を持つ巨大な獣が顕現した。
獣はアリンの後方で待機して、従う姿勢を見せる。
召喚魔法。
契約を交わした魔物や幻獣、あるいは神獣を召喚して、一時的に力を借りるという特殊な魔法だ。
才能だけではなくて、並外れた修練がないと習得することができない、高等技術だ。
召喚魔法は俺も使えるが、使役するのは一匹だけ。
そいつの育成ばかりしていたら、他と契約する機会がなかったんだよな。
語りたい。
アリンと召喚魔法について、夜を徹して語りたい。
うずうずしてしまう。
……って、いけない。
今は決闘の最中で、魔法について語る場ではない。
「イフリート、あなたの力を見せなさい!」
「ガァアアアアアッ!!!」
アリンの命令に応じて、イフリートが吠えた。
巨大な獄炎が生成されて、魔法人形に向けて解き放たれる。
ゴォッ!!!
魔法人形が炎に包まれた。
普通なら、この後、威力を示す数値が最大『999』で示されるのだけど……
『239274273232927……』
三桁を超えて数字が表示されるというバグ。
そして……
ボンッ。
魔法人形が爆散した。
アリンが使役するイフリートの攻撃に耐えられなかったのだろう。
魔法人形は上級魔法を100発受けても耐えられる設計なのだけど……
アリンの召喚魔法は、上級魔法100発以上の威力を一撃で叩き出すことができる、というわけか。
おもしろい。
ますます興味が出てきた。
決闘ということを忘れて、延々と語り合いたくなってしまう。
「ふふんっ」
アリンがニヤリと笑い、こちらを見た。
どうだ、これがあたしの実力だ。
こんな真似、あんたには到底できないでしょう?
そんな感じで、挑発するような目を向けてくる。
なるほど、そう来たか。
色々と語りたい気持ちはあるものの……
でも、
「俺は負けず嫌いなんだ」