「……うん?」
翌朝。
気持ちよく寝ていると、扉をノックする音が響いてきた。
ドンドンドン、と連打されている。
「なんだ、こんな時間に……」
まだ朝の五時だ。
しっかりと魔力を貯めるには、しっかりと睡眠を取ることが大事だ。
七時までは寝ていたいが……
「この様子だと、出てくるまでノックされそうだな」
次第にノックが激しくなってきた。
俺はため息をこぼして、手早く着替えた後、玄関の扉を開ける。
「やっと出てきたわね、ジーク・スノーフィールド!」
片手を腰に当てて、ふふんと偉そうに胸を張っているのは、第四王女のアリンだった。
彼女はすでに制服に着替えていて、ピシリとした格好をしていた。
「……」
「ちょっと!? 無言で扉を閉めないでよ!?」
ダンダンダン、と再び連打された。
ややあって、しくしくという泣き声が聞こえてくる。
「開けてよぉ……いきなり無理なんてひどいわよぉ……」
扉を引っかいているのか、カリカリという音が聞こえてきた。
隣に迷惑だから、おとなしく話を聞いた方がいいか。
「うー……」
再び扉を開けると、アリンは涙目だった。
飼い主に放置されて拗ねる犬みたいだ。
「なにか用か?」
「……あんた、お姉ちゃんの魔法の師匠になったらしいわね」
「そうだな。レガリアさんから話を聞いたのか」
「そんなの許せないわ! っていうか、邪なことを企んでいるでしょう!?」
「なんだよ、それ」
「魔法を教えるとか適当な理由をつけて、お姉ちゃんにえっちなことをするつもりでしょう!? この変態!」
そんな発想を持つ妹の方が変態だと思うのだが、それはどうだろう?
「そんなこと、まったく考えていない」
「なんでよ、おかしいでしょ!? お姉ちゃんを見て欲情しないとか、あんた、それでも男!? あたしは、ちゃんと欲情するわ!!!」
とんでもないことをさらりと告白しないでほしい。
お前、本当に王女か?
昨日のやりとりで、シスコンらしいことは伺えたが……
まさか、ここまでだとは。
「で……なんだ? いちゃもんをつけに、わざわざこんな朝早くにやってきたのか?」
「そんなわけないでしょう。ほら、これ」
なにやら手紙を渡された。
視線で促してくるので開いてみる。
『果たし状』と書かれていた。
「???」
「ちょっと、バカを見るような目をしないでくれる!?」
「いや、だって……」
「いい? いわば、あたしとあんたはお姉ちゃんを巡るライバルよ!」
「ライバル、ねえ……」
「どちらがお姉ちゃんの傍にいるべきか、決めましょう!」
「面倒だ、断る」
バタン。
「……」
沈黙。
そして……
「ひどいわよぅ……こんなにストレートな無視、ひどいわよぅ……」
涙声と、カリカリと扉をひっかく音が聞こえてきた。
いたずらをして怒られた猫か。
「まったく……」
「さあ、勝負よ!」
いたたまれなくなって扉を開けると、アリンは即復活してみせた。
また扉を閉めてやろうか?
無視してもいいのだけど……
ずっとつきまとわれるだろう。
会ったばかりなのだけど、彼女の性格はなんとなく理解した。
「仕方ないな……わかった、勝負を受ける」
「いい返事ね。男らしいところだけは褒めてあげる」
「で、どんな勝負をするんだ?」
「……」
なぜか返事がない。
アリンはちょっと間の抜けた顔で、ぽかーんと目を丸くしていた。
それから考える仕草を取る。
「……あっ」
「おい。なんだ、その『あっ』は? もしかして、決闘を了承させることだけを考えて、肝心の内容はなにも考えていないんじゃないだろうな?」
「そ、そそそ、そんなことないもんっ!」
わかりやすいヤツだ。
「えっと……」
考える。
考える。
考える。
「……」
アリンは、ダラダラと汗をかき始めた。
なにも思い浮かばなかったらしい。
「しょ、詳細は後で伝えるわ!」
「え?」
「ま、また放課後に来るわ!」
言い放ち、アリンは逃げるように立ち去った。
いや。
実際、逃げたのだろう。
自分から決闘を申し込んでおいて、内容を考えていないとか、ドジにもほどがある。
「第四王女アリンはドジ……いや。ドジを通り越して、ぽんこつ? まあ、そんな感じで記憶しておこう」
略して、ポリンでもいいかもな。
本人が聞いたら、たぶん……いや、絶対に憤慨するだろう。
「さて……」
一応、対策は練っておいた方がいいだろう。
ネコネと話をしておくか。
翌朝。
気持ちよく寝ていると、扉をノックする音が響いてきた。
ドンドンドン、と連打されている。
「なんだ、こんな時間に……」
まだ朝の五時だ。
しっかりと魔力を貯めるには、しっかりと睡眠を取ることが大事だ。
七時までは寝ていたいが……
「この様子だと、出てくるまでノックされそうだな」
次第にノックが激しくなってきた。
俺はため息をこぼして、手早く着替えた後、玄関の扉を開ける。
「やっと出てきたわね、ジーク・スノーフィールド!」
片手を腰に当てて、ふふんと偉そうに胸を張っているのは、第四王女のアリンだった。
彼女はすでに制服に着替えていて、ピシリとした格好をしていた。
「……」
「ちょっと!? 無言で扉を閉めないでよ!?」
ダンダンダン、と再び連打された。
ややあって、しくしくという泣き声が聞こえてくる。
「開けてよぉ……いきなり無理なんてひどいわよぉ……」
扉を引っかいているのか、カリカリという音が聞こえてきた。
隣に迷惑だから、おとなしく話を聞いた方がいいか。
「うー……」
再び扉を開けると、アリンは涙目だった。
飼い主に放置されて拗ねる犬みたいだ。
「なにか用か?」
「……あんた、お姉ちゃんの魔法の師匠になったらしいわね」
「そうだな。レガリアさんから話を聞いたのか」
「そんなの許せないわ! っていうか、邪なことを企んでいるでしょう!?」
「なんだよ、それ」
「魔法を教えるとか適当な理由をつけて、お姉ちゃんにえっちなことをするつもりでしょう!? この変態!」
そんな発想を持つ妹の方が変態だと思うのだが、それはどうだろう?
「そんなこと、まったく考えていない」
「なんでよ、おかしいでしょ!? お姉ちゃんを見て欲情しないとか、あんた、それでも男!? あたしは、ちゃんと欲情するわ!!!」
とんでもないことをさらりと告白しないでほしい。
お前、本当に王女か?
昨日のやりとりで、シスコンらしいことは伺えたが……
まさか、ここまでだとは。
「で……なんだ? いちゃもんをつけに、わざわざこんな朝早くにやってきたのか?」
「そんなわけないでしょう。ほら、これ」
なにやら手紙を渡された。
視線で促してくるので開いてみる。
『果たし状』と書かれていた。
「???」
「ちょっと、バカを見るような目をしないでくれる!?」
「いや、だって……」
「いい? いわば、あたしとあんたはお姉ちゃんを巡るライバルよ!」
「ライバル、ねえ……」
「どちらがお姉ちゃんの傍にいるべきか、決めましょう!」
「面倒だ、断る」
バタン。
「……」
沈黙。
そして……
「ひどいわよぅ……こんなにストレートな無視、ひどいわよぅ……」
涙声と、カリカリと扉をひっかく音が聞こえてきた。
いたずらをして怒られた猫か。
「まったく……」
「さあ、勝負よ!」
いたたまれなくなって扉を開けると、アリンは即復活してみせた。
また扉を閉めてやろうか?
無視してもいいのだけど……
ずっとつきまとわれるだろう。
会ったばかりなのだけど、彼女の性格はなんとなく理解した。
「仕方ないな……わかった、勝負を受ける」
「いい返事ね。男らしいところだけは褒めてあげる」
「で、どんな勝負をするんだ?」
「……」
なぜか返事がない。
アリンはちょっと間の抜けた顔で、ぽかーんと目を丸くしていた。
それから考える仕草を取る。
「……あっ」
「おい。なんだ、その『あっ』は? もしかして、決闘を了承させることだけを考えて、肝心の内容はなにも考えていないんじゃないだろうな?」
「そ、そそそ、そんなことないもんっ!」
わかりやすいヤツだ。
「えっと……」
考える。
考える。
考える。
「……」
アリンは、ダラダラと汗をかき始めた。
なにも思い浮かばなかったらしい。
「しょ、詳細は後で伝えるわ!」
「え?」
「ま、また放課後に来るわ!」
言い放ち、アリンは逃げるように立ち去った。
いや。
実際、逃げたのだろう。
自分から決闘を申し込んでおいて、内容を考えていないとか、ドジにもほどがある。
「第四王女アリンはドジ……いや。ドジを通り越して、ぽんこつ? まあ、そんな感じで記憶しておこう」
略して、ポリンでもいいかもな。
本人が聞いたら、たぶん……いや、絶対に憤慨するだろう。
「さて……」
一応、対策は練っておいた方がいいだろう。
ネコネと話をしておくか。