「これが私の教育ですよ。エアランス!」
フリスが風系初級魔法を放つ。
風で編んだ槍を打ち出すもので、殺傷力は極めて低い。
ただ、拳で殴られるのと変わらない威力があるため、質が悪いことに変わりはない。
フリスの暴挙を目の当たりにして、トムじいさんは……
「……やれやれ」
ワンステップ、横に移動することで魔法を回避した。
「「なっ!?」」
フリスとドグが驚愕していた。
それも仕方ないだろう。
風魔法は威力は低いが、圧倒的に速い。
魔法によっては、音を超える速度で飛翔するものもある。
そんな魔法を、あの距離で、予備動作なしに回避されたのだ。
フリスとドグはさぞかし驚いたことだろう。
「……」
ネコネも驚いているらしく、目を大きくしていた。
「お前さん、非常時でもない限り、魔法は人に向けて放つものではないぞ」
「な、なにを……」
「貴様、フリス先輩にふざけた口をきくな! ファイアランス!」
先に我に返ったドグが魔法を放つ。
今度は火属性の魔法だ。
初級だろうと、直撃したらタダでは済まない。
しかし……
「……」
トムじいさんはまったく動揺せず、落ち着いていて、再び魔法を避けてみせた。
「なるほど」
なぜ、トムじいさんは魔法を避けることができるのか?
そのからくりが理解できた。
ただ、フリスとドグは理解できないらしく、目の前の光景が信じられないとばかりに瞬きを繰り返している。
至近距離で魔法を何度も回避してみせる。
それは恐怖を感じることだったらしく、二人は震えていた。
「さて」
「「っ!?」」
トムじいさんが前に出ると、フリスとドグはびくりと震えて、後退する。
「やんちゃな生徒はおしおきをしなければいけないが……」
「くっ……お、覚えておきなさい! この屈辱、必ず晴らしてみせますよ!」
「あぁ!? 待ってください、フリス先輩!」
脱兎の如き逃げ出す二人。
貴族と言っていたような気がするが、とてもじゃないが高貴な姿には見えないな。
この様子なら放っておいても問題はないだろう。
それよりもトムじいさんだ。
攻撃は回避していたけれど、もしかしたら見えないところで怪我をしていたかもしれない。
俺の目も万能ではないからな。
「大丈夫か?」
「おや、これは……むっ」
トムじいさんは、恥ずかしいところを見られたというような顔をして……
次いで、鋭い表情に切り替わる。
なんだ?
「どうして姫様が暴君と一緒に……」
「暴君? なんのことだ?」
「とぼけるか……そうか、もしや姫様によからぬことを? 姫様から離れよ!」
「えっ」
トムじいさんがものすごい勢いで駆けてきた。
一瞬で目の前に。
大地を踏み抜くような勢いで一歩を出して、その力を拳に転換して打ち出す。
ギィンッ!
トムじいさんの拳は結界によって防がれた。
今の一撃は完全な不意打ちで、俺も対応できなかったのだけど……
こういう時のために、常に結界を展開している。
ある程度の攻撃は防いでくれるから問題ない。
とはいえ……
「おい、いきなり攻撃とはどういうことだ?」
「それは儂の台詞である。姫様に近づき、なにを企んでいる?」
「いや、俺は……」
「問答無用!」
さきほどと違い、ものすごく苛烈だ。
トムじいさんは、結界なんて気にしないとばかりに拳を連打する。
そんなことをすれば、普通、拳の方が砕けるのだけど……
その様子はない。
むしろ、結界の方が砕けてしまいそうだった。
「マジか」
結界を拳で砕くなんて、初めて見た。
とある仕掛けがあるとしても、なかなかできることじゃない。
「面白いな」
ニヤリと笑う。
強者との戦いは好きだ。
俺の魔法がどれだけ通用するか、確かめることができる。
また、さらに成長して新しい魔法を習得、開発できる良い機会でもある。
俺は魔力を練り上げて……
「やめてください!」
「「っ!?」」
ネコネの叫び声に、俺とトムじいさんはピタリと動きを止めた。
なんて大声。
耳がキーンとする。
「なにか勘違いしているみたいですが、スノーフィールド君は悪い人ではありません。スノーフィールド君も、おじいさんとケンカをしようとしないでください」
「えっと……」
「あー……」
トムじいさんと顔を見合わせて、
「「ごめんなさい」」
揃ってネコネに頭を下げた。
時に、男は女性にどうやっても敵わないものなのだ。
フリスが風系初級魔法を放つ。
風で編んだ槍を打ち出すもので、殺傷力は極めて低い。
ただ、拳で殴られるのと変わらない威力があるため、質が悪いことに変わりはない。
フリスの暴挙を目の当たりにして、トムじいさんは……
「……やれやれ」
ワンステップ、横に移動することで魔法を回避した。
「「なっ!?」」
フリスとドグが驚愕していた。
それも仕方ないだろう。
風魔法は威力は低いが、圧倒的に速い。
魔法によっては、音を超える速度で飛翔するものもある。
そんな魔法を、あの距離で、予備動作なしに回避されたのだ。
フリスとドグはさぞかし驚いたことだろう。
「……」
ネコネも驚いているらしく、目を大きくしていた。
「お前さん、非常時でもない限り、魔法は人に向けて放つものではないぞ」
「な、なにを……」
「貴様、フリス先輩にふざけた口をきくな! ファイアランス!」
先に我に返ったドグが魔法を放つ。
今度は火属性の魔法だ。
初級だろうと、直撃したらタダでは済まない。
しかし……
「……」
トムじいさんはまったく動揺せず、落ち着いていて、再び魔法を避けてみせた。
「なるほど」
なぜ、トムじいさんは魔法を避けることができるのか?
そのからくりが理解できた。
ただ、フリスとドグは理解できないらしく、目の前の光景が信じられないとばかりに瞬きを繰り返している。
至近距離で魔法を何度も回避してみせる。
それは恐怖を感じることだったらしく、二人は震えていた。
「さて」
「「っ!?」」
トムじいさんが前に出ると、フリスとドグはびくりと震えて、後退する。
「やんちゃな生徒はおしおきをしなければいけないが……」
「くっ……お、覚えておきなさい! この屈辱、必ず晴らしてみせますよ!」
「あぁ!? 待ってください、フリス先輩!」
脱兎の如き逃げ出す二人。
貴族と言っていたような気がするが、とてもじゃないが高貴な姿には見えないな。
この様子なら放っておいても問題はないだろう。
それよりもトムじいさんだ。
攻撃は回避していたけれど、もしかしたら見えないところで怪我をしていたかもしれない。
俺の目も万能ではないからな。
「大丈夫か?」
「おや、これは……むっ」
トムじいさんは、恥ずかしいところを見られたというような顔をして……
次いで、鋭い表情に切り替わる。
なんだ?
「どうして姫様が暴君と一緒に……」
「暴君? なんのことだ?」
「とぼけるか……そうか、もしや姫様によからぬことを? 姫様から離れよ!」
「えっ」
トムじいさんがものすごい勢いで駆けてきた。
一瞬で目の前に。
大地を踏み抜くような勢いで一歩を出して、その力を拳に転換して打ち出す。
ギィンッ!
トムじいさんの拳は結界によって防がれた。
今の一撃は完全な不意打ちで、俺も対応できなかったのだけど……
こういう時のために、常に結界を展開している。
ある程度の攻撃は防いでくれるから問題ない。
とはいえ……
「おい、いきなり攻撃とはどういうことだ?」
「それは儂の台詞である。姫様に近づき、なにを企んでいる?」
「いや、俺は……」
「問答無用!」
さきほどと違い、ものすごく苛烈だ。
トムじいさんは、結界なんて気にしないとばかりに拳を連打する。
そんなことをすれば、普通、拳の方が砕けるのだけど……
その様子はない。
むしろ、結界の方が砕けてしまいそうだった。
「マジか」
結界を拳で砕くなんて、初めて見た。
とある仕掛けがあるとしても、なかなかできることじゃない。
「面白いな」
ニヤリと笑う。
強者との戦いは好きだ。
俺の魔法がどれだけ通用するか、確かめることができる。
また、さらに成長して新しい魔法を習得、開発できる良い機会でもある。
俺は魔力を練り上げて……
「やめてください!」
「「っ!?」」
ネコネの叫び声に、俺とトムじいさんはピタリと動きを止めた。
なんて大声。
耳がキーンとする。
「なにか勘違いしているみたいですが、スノーフィールド君は悪い人ではありません。スノーフィールド君も、おじいさんとケンカをしようとしないでください」
「えっと……」
「あー……」
トムじいさんと顔を見合わせて、
「「ごめんなさい」」
揃ってネコネに頭を下げた。
時に、男は女性にどうやっても敵わないものなのだ。