「おはよう! 朝陽くん」
「うわ、びっくりした。なんだ藤木か、おはよう」
登校中、突然後ろから挨拶された加藤朝陽は驚きつつも、ゆったりとした口調で挨拶を返した。
元気いっぱいな笑顔と声で挨拶してきたのは、1年の時に同じクラスだった藤木紗奈だ。
去年の文化祭委員を一緒に務めた二人は共通の趣味――スマホゲームを通じて意気投合して以来この方、友だち以上恋人未満の関係を続けていた。
周りは、二人はもう付き合っているものだと認識していたが、本人たちは想いを告げたわけではなく、あくまで「仲の良い友だち」のままだった。
「いつも駅で待っててって言ってるのにー!」
「ごめんごめん」
家が反対方面の二人は、乗る路線が違う。そして本数もそれほど多くないため、朝陽が学校に行く時間帯だとどうしても紗奈の方が数分後に駅に着くのだ。
少しでも長く朝陽と一緒に居たい紗奈が駅で待ってくれと何度も頼んでいるのにも関わらず、その願いを朝陽がきいてくれた試しはない。
「朝陽くん、あのさ……」
紗奈は、周囲に人が居ないことを確認する。朝陽は朝練ならぬ朝勉を日課としていたため、この時間帯にほかの生徒はまず居ない。
紗奈は、おずおずと隣の朝陽を見上げた。
「うん、どうかした?」
「今日の放課後、付き合ってほしい所があるの……」
「いいけど、どこに?」
「それは、あとのお楽しみ」
「なんだそれ」
ふっと柔らかに笑う朝陽の笑顔を見て、紗奈も顔がほころぶ。
紗奈は、少しおっとりとしていて、かと言って周りに流されるわけではない自分の芯を持ったやさしい朝陽が好きだった。
それは、いつもと変わらない朝だった。
*
約束の放課後、学校の近くの公園で待ち合わせをした二人。
先に着いた朝陽は、ブランコに座ってゆらゆらと揺れていた。
公園には、誰も居ない。
時折目の前の通りを誰かが通るくらいで、辺りはとても静かだった。
「だーれだ!」
「……ちょっと藤木、もう少し普通に現れてくれない? 心臓に悪い」
突然目を塞がれた朝陽は、心底嫌そうな顔を向けた。
「ごめんね、一度やってみたかったの」
両手を顔の前で合わせて、紗奈はぺろりと舌を出しておどけてみせる。惚れた弱みだろうか、朝陽はそれ以上何も言わなかった。
キィー……キィー……
紗奈がブランコを蹴るたびに錆びた鎖が悲鳴をあげる。
「ママ―! ブランコゆらゆら―!」
通りを歩く子どもが、こちらを指して母親に遊びたいとねだっていたが、母親は気まずそうな顔で「また今度にしよう」と言い聞かせていた。
「あら、帰っちゃったね」
「そうだね」
紗奈は「ま、いっか」とまたブランコをこぎだした。
「今日、学校楽しかった?」
こぎながら、紗奈が朝陽に問う。朝陽は、少し考えてから言った。
「ずっと藤木のこと考えてた」
「えっ? 私?」
思わぬ回答に、紗奈は顔を真っ赤にさせつつも、横を向いて朝陽を見た。しかし、紗奈の目に映る朝陽は、どこか虚ろな目で宙を見つめていた。
「うん、そう。藤木」
それは、朝陽の本心だった。今日一日紗奈は何をして過ごしているのだろうか、と考えていた。
「紗奈ちゃん可愛いなーって?」
「数学の授業、よだれ垂らして寝てんのかなーって」
同時に出た言葉はぶつかりながらも互いの耳に届く。
「ぶはっ! 紗奈ちゃん? 可愛い? どの口が言うの」
あはははは、とツボに入ったかのように腹を抱えて笑う朝陽を紗奈は睨みつけた。
「酷い! いくら私でもよだれは垂らしません!」
「寝てるのは否定しないんだな」
朝陽は目に滲んだ涙を指で拭いながら、「そういうとこ、素直で良いよ」と言った。
穏やかな、ひと時だった。
しばらくスマホゲームの話題に花を咲かせていた二人だったが、朝陽が思い出したように切り出す。
「藤木が行きたかったとこって公園?」
「ここもだけど、他にもあるの。朝陽くんまだ時間ある?」
「うん、大丈夫だよ」
「じゃぁ、行こうか」
ブランコから降りて、二人は公園を後にする。通学路まで出ると、紗奈は駅とは反対の道を進む。
「どこ行くの」
「着いてきて」
下校ラッシュの過ぎた通学路は、朝と同じで人気は少ない。
すれ違う生徒は二人の知らない人ばかりだった。
高校も過ぎて、少し行くと大きな橋に着く。
紗奈は躊躇わず橋の手前の土手を歩くと、河原へと降りる道を探して進む。朝陽は、黙って紗奈の後ろ姿を追った。
生い茂るススキに埋もれて見失いそうになる紗奈の背中に不安が胸を過ぎる。こんなに小さかっただろうか、となぜか胸がざわついた。
「藤木! ちょっと待って」
「あ、やっと抜けた!」
ススキをかき分けながら進むと、ようやく視界が開け、眩しい西日が二人を出迎えた。思わず腕で日差しを遮って、二人は互いの存在を確認するかのように見つめ合った。
「眩しいね」
「うん、眩しい」
段になった所に腰を下ろして、二人は目の前を流れる川面を眺めた。
「こんなとこ、あったんだな。知らなかった」
「ここね、もう少しあたたかくなったら朝陽くんと一緒に来ようと思ってた所なの」
「そうだったんだ」
二人は前を向いたままだ。
紗奈は続ける。
「春には、土手の満開の桜を見ながらお弁当持ってお花見して」
「うん」
「夏には、裸足になって一緒に川に入って水の掛け合いっこして」
「うん」
「秋には……、なんだろう、さっきのススキの中でかくれんぼもできたかな」
「うん」
「けど……」
喉になにかが詰まったように、紗奈は喋るのを止めた。隣を向いた朝陽が見たのは、頬を滑るように落ちていく紗奈の涙。唇をぎゅっと閉じて、前を見据えた真っすぐな紗奈の横顔は、西日に照らされて輝いて見えた。
「もう……できない……」
「……うん……」
なぜ、「できない」のか、朝陽は聞かなかった。
驚きに紗奈の目が見開かれる。
「朝陽くん……私が死んだこと知ってた……?」
「うん……、朝、学校で先生が」
紗奈が昨日交通事故で亡くなったと知らされたのは、朝のHRでのことだった。
下校途中のことだったため、注意喚起も含めて全校生徒に伝えられた。
「そっか……。知らない振りしててくれたんだね、ありがとう」
朝陽は返事に詰まる。知らない振りをしていたのは、紗奈のためではなく自分のためだったから。知っていることを伝えたら紗奈が居なくなってしまいそうな……この不思議な現象が夢になってしまいそうで怖くて言えなかっただけだ。
黙り込んだ朝陽に、紗奈は続けた。
「それでね、信じてもらえないかもしれないけど……、死んだあとね、死神が現れて……」
*
時はさかのぼること1日前。
「初めましてこんにちは、未練たらたらの幽霊少女さん」
「へ? ユーレイショウジョ?」
突然声を掛けられた紗奈は、ふと我に返り辺りをキョロキョロと見渡す。しかし、周りにそれらしき人は見当たらない。
「上です、上」
声につられて見上げると、遥か頭上、黒づくめの男が宙に浮いていた。
「……」
紗奈は、驚きのあまり声を失う。そして、見間違いだろう、と目をごしごしとこすってからもう一度宙に浮くソレを見たが、見間違いではなかった。
「さ、さようなら~……」
「お待ちなさい、幽霊少女」
「ひぃぃっ」
背を向けたはずなのに、黒づくめの男が目の前に立ちはだかり、紗奈は悲鳴をあげる。真っ白い能面のような顔が、黒いフードの中で浮かび上がっているかのようだった。
三日月よりも細い目が紗奈を見下ろす。じとっとした視線に、紗奈は背筋が凍りそうだ。
「私は、死んだ者の魂から未練を切り離し黄泉の国へ送る、世にいう死神です」
「だっ、誰か! 助けてぇぇ!」
「無駄ですよ。生者には、死者の声も死神の声も聞こえません」
死神と名乗った男の言う通り、周りを歩く人たちは二人の存在には気づいていないようだった。これだけ見た目があやしい男と、怖がる女子高生が居たらジロジロと見られていたに違いない。
「うそ……、え……、私、ホントに死んだの?」
「覚えてないのですか? ほんの数時間前に居眠り運転のトラックに撥ねられて亡くなったんです」
死んだのですよと言われて「はいそうですか」と信じられる人がこの世にどれだけいるだろうか。
「ゆ、夢ね、これは!」
「信じられないのなら、あなたの亡骸とそれに縋る家族の姿でも見に行きましょうか?」
必死にこれが現実ではない理由を探す紗奈に、死神は容赦ない言葉を突きつけた。
「信じられない……」
紗奈の口からこぼれた言葉は、現実に対してか、それとも死神に向けたものか、死神にはわからなかった。
そして、宙に浮いた黒づくめの男、叫んでも誰一人目を向けないという事実は、状況証拠として紗奈を現実に引き戻すには充分だった。
少しの間のあと、紗奈はおもむろに道を歩く人の前に立ちはだかる。
すると、通行人は紗奈の体をすーっと通り抜けてそのまま行ってしまった。その後も、何人かに声をかけたが、誰一人紗奈を認識することがなかった。
「やっと信じてもらえたでしょうか?」
やれやれといった顔の死神は、戻ってきた紗奈に言った。
「全然、覚えてなくて……」
「ショックで記憶が曖昧になることはよくあるようですよ。少なくとも私は人間ではないので知りませんが。これまでも、あなたのように死んだ時の記憶がない人は大勢いました」
「私はこれからどうなるの?」
「未練を断って、黄泉の国に行っていただきます」
「未練……」
「そのために、願いを一つだけ叶えてお手伝いするのが私の役目です」
死神の話はこうだ。
未練が残っている死者は、黄泉の国には行けずに地縛霊としてこの世に残り続ける。
しかし、それを良しとしない神さまが、一人でも多くの死者を黄泉の国に連れてこいと死神を遣わしているという。
そして、未練を断ち切るために必要ならば、死者の願いを一つだけ叶える力を死神に与えている。
その願いは、人間の生死に関わること以外なら大抵のことは叶うのだと、死神は言った。
「じゃぁ、私を生きてる人にも見えて、喋れるようにして!」
話を聞き終えた紗奈は、迷うことなく願いを口にした。
「その理由は?」
「ある人に、私の気持ちを伝えたいの」
「そうすれば、未練は消えると?」
紗奈はこくりと頷く。
その目に偽りのないことを見て取った死神は、漆黒の目を細めて笑った。
「いいでしょう。では、そのある人にだけ会って話せるようにしてあげます――――」
*
事の経緯を話し終えた紗奈は、話し疲れたのかふーっと長い息を吐いた。
言うまでもなく、紗奈が気持ちを伝えたい「ある人」とは朝陽だった。
朝陽は相槌ひとつ打てずに、まるで御伽噺のような話をつむぐ紗奈の口元をぼうっと眺めていた。
既に死んでいるはずの紗奈が目の前にいるという奇妙な現象そのものが、現実の出来事だということを体現している。
「朝陽くんに私の気持ちを伝えにきたの」
朝陽は、言うべき言葉が見つからない。それもそのはず、紗奈の気持ちを聞いてしまえば、紗奈は本当に消えてしまうのだから。
昨日まで、普通に喋っていた紗奈が消えてしまう。
こうなるまで、昨日と同じ明日が来るんだと、信じて疑わなかった。
人の死とは、なんてあっけないんだろうか。
それでも、今はどうだろうか、と朝陽は考える。
今、自分は昨日と同じように紗奈と会って話しているではないか、と。
それなら――――、
「言わなくても……いいんじゃないかな……」
気づけば、そんな言葉が口を突いて出ていた。
「え……?」
「多分、俺、紗奈の気持ちわかってる……つもりだから……」
言うべきじゃないと頭のどこかでわかっているのに、朝陽はそれをとめられない。
「言わなければ……、未練を断ち切らなければ、藤木はずっとここに居られるってことだろ……? それなら、ずっとこうして二人一緒に――」
「それはできないよ」
凛とした声音につられて紗奈を見た朝陽は、透き通るような紗奈の瞳に見つめられて自分の愚かさを思い知る。
紗奈の願いは、未練を断ち切るための願いであって、本来の願いを叶えるためのものじゃない。
「だってね」
言いながら、手をゆっくりと朝陽の頬に伸ばす。
「朝陽くんが泣いているのに、私は涙を拭うこともできないんだよ」
その言葉の通り、朝陽の瞳から零れた涙は、紗奈の指先を通り抜けて顎先からポトリと落ちていった。
朝陽は、てのひらで濡れた頬を拭う。
「触れることも、手を繋ぐことも、抱きしめることもできない」
「でもっ! こうして話せるじゃないか、俺は、それだけで、」
紗奈は、その瞳に涙を溜めて、顔を横に振った。泣くのを必死にこらえている。そんな顔をさせてしまったことに、朝陽は胸を痛めた。
「私の居場所は、ここじゃない」
「ま、待って、藤木――」
朝陽の制止もむなしく、紗奈は言葉をつむぐ。
「朝陽くんのこと、ずっと好きだった」
紗奈はそれだけ言うと、とうとう溢れた涙でぐちゃぐちゃになった顔で笑った。まるで、それが合図になったかのように、紗奈の体は透けはじめ、朝陽は息を呑む。
「今まで、仲良くしてくれてありがとう」
「――お、俺もっ……藤木のこと、好きだったんだ! ごめん、ずっと言えなくて……、ありがとう、紗奈!」
紗奈の手を握ろうとした朝陽だったが、叶わない。なんの感触も手ごたえもなく、朝陽の手は虚空をさまようだけだった。
「嬉しい……、私たち両想いだったんだね。こんなことになるなら、もっと早く言っておけばよかったね……」
紗奈もまた朝陽の手に自らの手を重ねようと伸ばす。
生きている時、一度も手をつないだことのない二人にとって、すり抜ける互いの手をただ同じ場所に留めておくだけでも、充分だった。
けれど、それはあまりにも短くて悲しい時間だった。
「紗奈っ」
瞬く間に紗奈は薄くなり、天に向かって光を伸ばす。
「ばいばい、朝陽くん――――」
そして、光は空に吸い込まれるようにして消えていった。
紗奈を連れて。
「紗奈……、ごめん……」
一人取り残された朝陽は、紗奈が消えた空を見上げて立ち尽くしていた――――
――――パチパチパチ……
どこからともなく響いた慇懃無礼な拍手。
「お見事でした」
振り向いた朝陽の視線の先には、漆黒の衣を纏った男。
死神がいた。
「お手伝いいただき、誠に感謝いたします」
地面から数十センチ離れた宙に浮いた死神は、冷徹さを滲ませる鋭い双眸をさらに細めて笑うと、深々と一礼する。
「いやしかし、あなたがあの娘に『ずっと二人でいよう』と言い出した時はどうなることかと思いましたけどね」
紗奈を見送るのを手伝うと言ったのにも関わらず、涙する紗奈を目の前にした途端、こみ上げてきたあの感情は「後悔」。いっそのこと、死神との約束も反故にしてでも紗奈と二人一緒にいたいと欲が湧いて出た。
「あれはあなたの本音でしょうか、それとも演技でしょうか……まぁ、どちらでも私には関係のないことですね。あの娘も無事に黄泉おくりできたこ――」
「――うるさい、黙れ死神」
朝陽は死神を睨みつける。その顔には、憎しみがこめられていた。
「おぉ怖い」
「俺は、お前のために紗奈の未練を断ち切ったんじゃない」
唇を噛み、拳を強く握りしめるその姿からは悔しさがにじみ出る。その姿に死神は首を傾げた。
「――あの娘がこの世に未練を残さず、無事に黄泉の国へ行くことを望んだのは、あなた自身でしょう? それと同時に、あの娘もまた心残りを晴らすことを望んでいた。なのに、なぜそんな顔をしているのです?」
「紗奈のことを騙した事に変わりないじゃないか……」
死神は、朝陽の言葉に一瞬目を見張り、そしてため息をつく。人ではない死神にとって、「情」という感情は到底理解できないものだった。
「人間というのは、本当に面倒くさい生き物ですね」
心底面倒くさい、といった顔の死神の手にはいつの間にかその象徴たる大鎌が握られていた。彼は、その矛先を朝陽へと向ける。
「――さぁ、もういいでしょう? あなたの望みも叶いました。今度はあなたが約束を果たす番です」
――――生者には、死者の声も死神の声も聞こえません。
死神が紗奈に言った言葉だ。
紗奈のように、死者からの願いによって死者の声を生者に一時的に聞こえるようにすることは可能だ。
しかし、死神の声は例え死者が願ったとしても、それは叶えられない。
死神の声は、例外なく死者にしか届かない。
――そう、朝陽もまた、紗奈と同じく死者だった。
紗奈と朝陽は下校途中で一緒に交通事故に遭い亡くなった。紗奈を庇った朝陽はその場で即死し、紗奈も運ばれた病院で手術を受けたが目を覚ますことなく息を引き取る。
そして、現れた死神から紗奈と同じように「死ぬ前に一つだけ願いを叶えられる」と言われた朝陽が口にした願いは、紗奈がちゃんと未練を断って黄泉の国へ行けるのか見届けたいというものだった。
紗奈はなぜか事故の事を思い出せずにいた。だから朝陽も一緒に事故に遭ったことはもちろん、死んでいることを知らなかった。
紗奈をかばって朝陽も死んだと知れば紗奈は悲しむ。
朝陽は好都合だと思い、それを黙っていた。結果的に紗奈を騙すことになってしまったのを悔いていた。
「言われなくてもわかってる。死神の手は借りないから安心しろよ」
死者に未練を断ち切りたい意志があるのに自分では踏ん切りがつかない場合に限り、死神は大鎌でそれを断ち切ることができるのだという。
大鎌を向ける死神を制して朝陽は、目を閉じて息を吐いた。
その顔は、先ほどまでの苦渋は欠片もなく至極安らかだった。
「なぁ、死神」
「なんでしょう」
「ありがとな」
予想外の言葉に、今度は豆鉄砲をくらったような顔になる死神だったが、それも一瞬のこと。死神はいつもと同じ口調で「仕事ですから」とだけ返す。
「うん、それも知ってる。けど、ありがとう」
そして、朝陽も先ほどの紗奈と同様に体が透けて薄くなり、瞬く間に朝陽は光りとなって天へ消えていった。
死神は光りにつられて空を見上げる。
「――何度見ても、美しい光景ですね……黄泉おくりは」
雲一つない空の下、生きている者には決して聞こえることのない死神の声だけが静かに響いていた。
【fin.】