「いや、正直色々大変なことはあったんだけど、なんか全部悪いことは長続きしないっていうか……二日三日でぱっといなくなるんだよな」

「ふむ? それもまた変わった話だね……」

煌自身に祓う力はないようだし、祓う力を持った呪具を携えているわけでもなさそうだ。

月音は、煌の様子を見てこうと結論づけた。

「でも、そーかー、黒藤様がいらっしゃるのかー」

「どんな人なの? 影小路先輩」

「んー、直接会ったことはないから顔も知らないんだけど、まあ規格外にお強いって噂はたくさん聞いてる。あと、白桜様の幼馴染だって」

「へえ」

「はっ! 百合緋様をめぐって、白桜様と黒藤様の争いなんかが勃発したらどうしよう! 私は白桜様×百合緋様推しだからなあ。黒藤様を応援は難しいなあ」

「いや、顔も知らない人でどんな妄想してるの。そういえばだけど、月御門って月音ちゃんのことどう認識してるの?」

「どういう意味?」

「クラスメイトだけなのか、陰陽師としても知ってるのか? みたいな」

「知らないんじゃないかなあ。言っても私、正式に陰陽師は名乗れんのよ」

「そうなの? お祓いできるのに?」

「祓うって言っても父様の力を借りてだし、一応霊感はあるけどそれだけなんだよ。次のうちの当主も、従弟に内定してるし」