トイレで手を洗ったついでに鏡に視線を向けた時、そこに映る自分に黒くて冷たい印象を受けた。人は見た目が九割って、まさにその通りだ。

 釣り上がった目尻に、瞳の下にある余白。無駄にくっきりした二重幅のせいで、三白眼の冷たい印象が余計に目立ってしまっている。
 ドライヤーが面倒だという一心でぶっつり顎のラインで切った髪には母譲りの艶があり、黒というより漆黒という言い方がしっくりくる。
 身長は一六五センチ。女子高生の平均身長と比較するとやや高い。
年のわりに大人びた自分の容姿に内心ため息が出た。
 きついだの、怖いだの、目が死んでいるだの、過去に散々言われてきた言葉はまるで呪いのように今もついて回る。

 もう少し黒目が大きかったら。もう少し身長が低かったら。もう少しだけ、柔らかくかわいい雰囲気の女の子だったら。

 そうしたら、今とはもっと違ったかもしれない。


 ないものねだりと言われたらそれまでだが、遣る瀬ない気持ちはいつまでも消えてはくれない。
 ブレザーのポケットに手を突っ込んだが、ハンカチは入っていなかった。どうやら忘れてきたらしい。
 公立高校のトイレにペーパータオルなんて便利なものは当然置かれていないので、仕方なく濡れた手で髪を軽く梳かし、私はトイレを出た。

 十八歳。まともな青春を体験しないまま、私の高校生活はもうすぐ終わりを迎える。