昼休み、真相は謎のまま私は汐崎さんを屋上へと案内する。
久しぶりに屋上に来たな……。
懐かしいとも捉えられる景色。
バタンッと音を立てて屋上の扉が閉まると、汐崎さんは話を切り出した。
「あの……間違ってたら本当に申し訳ないんだけど……。神園さんって何か偽ってない?」
「……!? 何言ってるの?」
汐崎さんに不意を突かれて一瞬、動揺はするものの私はなんとか平静を保つ。
しかし、汐崎さんの雰囲気は変わらなかった。
「一限目が始まる前の、ベランダにいたときの神園さんの表情……見ちゃったんだ。今の神園さんとは別人みたいで、昔の俺と似ていて……」
「昔の汐崎さん?」
前半部分にはあえて触れなかった。
これ以上、バレるわけにはいかなかったから。
私の仮面が外れてしまう気がしたから。
「うん、俺もね昔は何もかも絶望していた。俺は見た目がコンプレックスでね。それで昔はよくいじめられてたんだ。その時は消えてしまいたいと思った。でも、俺は光を見つけた。俺をドロドロとした暗いところから救い出してくれた人がいた。だから今度は俺がその光となりたい」
目は前髪で隠れているから見えない。
でも、口調からその真剣さは伝わってきた。
もしかして、この人なら……わたしの毒を吐いても受け入れてくれる?
いや、ダメだ。
私を知っている汐崎さんに言ったら、汐崎さんの中での完璧な私が崩れる。
それは絶対に避けなくちゃいけない。
「神園さんのあの表情を見た時、昔の俺と同じなんじゃないかなって思って。もし、そうなら俺は神園さんのことを助けたい。……いや、救いたい。それで……どう、なのかな?」
汐崎さんは小さく微笑んで私の返答を待つ。
私の心は確かに揺らいでいた。
あの裏のわたしがバレているんだったら、もういいんじゃないか。
いやいや、仮面を外したらきっと引かれる。
私の中の何かと何かが言い争っている。
私はその中の裁判官、全てを判断し、決定する者。
でも、もういいよね……。