自分の席に座ると、汐崎さんがすでに隣に座っていた。
 汐崎さんは一限目は数学だから数学の教科書を机の上に出している。
 私も教科書を机の上に出そう、そう思って手が動いた時だった。
 汐崎さんが四つ折りにされた小さな紙を私の机の上に置く。

「えっ?」

 私は思わず、疑問の声を上げて汐崎さんの方を見る。
 汐崎さんは小さくうなずくだけだった。
 見ていいよって言うこと……なのだろうか。

 わたしは勝手に汐崎さんがうなずいた意味を解釈すると、おられていた紙を丁寧に広げた。
 すぐに小さくて丸っこい汐崎さんの文字が目に入る。

『昼休み、二人きりになれる場所とか無い?』
「えっ?」

 また同じ疑問の声。
 二人きりになりたいとはどういう意図があってのことだろうか。
 考えたところで一向に答えは見つからない。

「屋上……とかかな?」
「わかった。昼休み、一緒に行こう」

 キーンコーンカーンコーン
 汐崎さんが小さく微笑むと同時に一限目が始まるチャイムが鳴った。