「おはよう、繭」
「うん、おはよう」
私はいつもの笑顔でクラスメイトに挨拶をする。
その笑顔は本当の……心の底からの笑顔ではなかった。
それは高校入学から高校一年生の今までずっと、続いている。
「今日さ、転校生が来るんだって。知ってた?」
「えっ、そうなの? 全然、知らなかったな」
「あっー、やっぱり? なんか繭はそんなことより勉強してそうだもんね。この前のテストなんて平均九十五点だったでしょ。すごすぎない? それに運動もめちゃくちゃ出来て、性格もいいとか完璧すぎない?」
「……そんなことないよ?」
少し間が空いて、私は満面の笑みで答える。
勿論、これも本当の笑顔ではない。
わたしが心の底から笑うことはもう無いだろう。
「そんな事あるんだって〜。あーあ、私も繭みたいに勉強できるようになりたかったな」
「私で良ければ力になるよ?」
「えっ〜、やったぁ! じゃあ今度、勉強教えてね」
「うん、わかった」
キーンコーンカーンコーン
その時、チャイムが教室中に鳴り響く。
それと同時に担任の先生が教室に入ってくると、私達はそれぞれ席に座った。
「……うるさいな」
呟いた一言は思っていた数倍、低い声だった。
これが仮面を外したわたしの姿である。
でも、こっちが本当のわたしか……と聞かれるとわからない。
簡単に言うと、二重人格に近いだろうか。
わたしがこうなった原因は全部全部、あれのせいだ。
そう思って私は頭を使って、記憶を辿った。