花香さんの曲を知ってもらおうと思いついてから早速、翌日に言ってみると。

「はぁ?!また突拍子もない事を言い出すじゃん、急にどうしたの」


「だめだった?一周年記念じゃリスナーのみんなを待たせちゃうし、ちょうど良いかなと思ったんだけど」

「だめではないけど…どうしたのあおくん、あおくんらしくないよ?急すぎるってゆーか」

「そーそー。リーダーらしくない。まぁ、丁度いいとは思うんだけど…。」



「じゃー決定。花香さんにお願いしとこ」


強行突破。一応二人からもOKが出たし、何より半年記念日に合わせるためにはもう言っておかないと間に合わなくなってしまうだろう。




「なん……え?!自分たちで作詞作曲は厳しくないって言おうとしたんだけど…。花香さんってだーれ?」


ゆうやですらも知らないのか…。この天才ボカロPを。


「ん」


「はなか…さん、ね。初めてみた。フォロワー1089人て信用していいの?」

「サムネかわちぃ…この絵も書いてるのかなぁ」



無言で携帯を突きつけると二人も調べ始めた。

そして、この部屋に静寂が訪れる。



…やっぱみんな、音楽のことになると真剣になるよなぁ…。



曲を聞いたり素性を調べたりしている二人の傍ら、俺も花香さんにすこしでも思いが届くよう、DMの文面を考える。



自己紹介は必須だろうし、自分が花香さんのファンであることも伝えたい。できればその感想も。

歌詞や日々のツイートを見る限りあまり自分の曲に対して自信を持っていなさそうだし、趣味程度に楽しんでいるように見える。



少なからず、あの苦しい状況から救ってくれた花香さんの曲の凄さは、それに対する感謝は伝えたい。



DMの文面をスマホのメモに書き起こしながら、ふと花香さんへの依頼って初めてなんじゃないだろうか、とか考えたりする。


花香さんはまめにファンへの感謝やリプをするほどファンを大事にする気持ちが強い。

それでも、ツイートには依頼への感謝や報告といったものは見受けられなかった。