それから俺は毎日、病室に通った。
初めて遙華の病室に来た日から十日ほど経ったある日の夜、遙華からメッセージが来ていた。
『明日、また星を見に行かない? 明日は流星群が見られるみたいなんだよね〜。どうかな?』
明日……何か予定ってあったか?
そう思って俺は自室のカレンダーを確認する。
特に何も予定が無い、親が帰ってくるのが遅いから強いて言えば、自分で料理を作らなければいけないことくらいか。
「料理、か……」
男子は料理が出来ない、そう思っている人は多いのではないだろうか。
否、俺は両親が共働きだからどこかで買うか自分で作るしか選択肢は無いのだが、流石にコンビニで食事を済ますのも飽きたことをきっかけに俺は数年前に料理に没頭した。
その結果、殆どの家庭料理は作れるようになった。
あの時は自分でも驚くほど料理の腕が上達したのを昨日のことのように覚えている。
ふと、俺はキッチンに行って冷蔵庫のドアを開けて中身を確認する。
「あっ、チーズに人参……トマト缶もある。これはスープとか作ってみるか? パスタを茹でて、ミートソーススパゲッティを作るか? リゾットとかも捨てがたいな」
食材たちを見ながら明日の食事のことを想像する。
楽しくなってつい、笑みがこぼれた。
その時、ふわりと頭の中にある一つの考えが舞い降りた。
「明日、病院に持っていくのはどうだ?」
流星群を見に行くのであれば寒い中、流れ星を待つために待機することもあるだろう。
この前、家から病院への道のりで肌寒く感じたのだ。
人によっても温度の感じ方は人それぞれだし、持っていっておいて決して損は無いだろう。
ピッーピッーピッー
長い時間、冷蔵庫を開けっ放しにしていたので冷蔵庫に怒られてしまった。
俺は慌てて冷蔵庫を閉めると、自室に戻ってスマホを取る。
『勿論、行くよ。楽しみだね』
そう俺が返信すると、スマホはすぐに振動する。
……遙華はよっぽど、暇なのだろうか?
まぁ、病室って退屈そうだしな。
『うん! それじゃあ、おやすみ』
『おやすみ、遙華。また明日』
そこまでやり取りが終わると、俺はスマホを机の上に置く。
……明日も学校があるから、今のうちに料理の下ごしらえしよう。
そう思って俺はキッチンへ向かった。