その次の日も俺は彼女の病室を訪れた。
「今日も来てくれたんだね」
「当たり前だ」
「そっか。そう言えば昨日、学校を見るだけであのことがフラッシュバックする……とか言ってたよね。もしかしてあのときの……」
「うん、しっかり引きずってる」
そう、実は俺は小学校の頃、いじめられていた。
単純な暴力、悪口。
物を隠されたり、水をかけられたり、ひどいときはハサミで髪を切られたりもした。
でもあの時は遙華が俺がいじめられている姿を目撃したときに、俺のことを助けてくれていじめてた人たちに大激怒していじめは収まったんだけど。
しかしその時の傷は大きく、それ以来俺は学校のあの賑やかな雰囲気がトラウマになってしまった。
多分学校では、弱い自分がこれ以上傷つかないように薄い殻で自分を守っている……そういうふうに自分で解釈してした。
「大丈夫だよ」
遙華は今までのどこか引っかかるような笑顔では無く、素直な笑顔を俺に向ける。
その笑顔に俺はあの悩みは解消できたんだなとホッと胸をなでおろす。
「トラウマでも学校に来てる星夜はすごいんだよ? 学校が嫌でもいい、人には必ず好き嫌いがあるから。でも、学校を好きになりたいなら一緒に頑張ろ? 私がついてるからさ」
「もう当分、学校行ってないのにか?」
「ちょっと、うるさい! でも、私も力になりたいからさ。星夜と同じでね」
「うん、ありがとう」
言葉でこれだけ救われるものなのか、そう初めて実感する。
心がふわっと軽くなるような……そんな感覚がした。
俺は思わず、嬉しさで頬が緩む。
そんな顔を見て、遙華も優しく笑った。
こんな日がどれだけ続けば良かっただろう。
そんなことを後悔しても、時間は取り戻せない。
時間は何かで交換できる代物ではない。
だからこそ『今』という時を大切にしなければならない。
刻一刻と近づいている。
――桜が満開になる日が。