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「華取翁は大和姫レベルの行動力だからなあ」
全は斎月のことを、「大和姫」と呼んでいる。
いちいち旧い表現のが好きなようだ。
在義と共に彼の病室に行ったことだけ話すと、全は大きく肯いた。
なんか知らんが勝手に納得してんじゃねえよ。
「それで――感傷に浸るとか、なかったわけか」
「全然。その辺りの欠落、思い知らされた」
自分のための涙など、考えたこともなかった。
出生を知った咲桜を家に呼んだ折、確かに自分は泣いていた。
涙にぬれる咲桜の頬を捉えて、自分も。
……でもそれは、自分のための涙なんかではなかった。
感情が咲桜にしか動かない流夜は、咲桜の抱えた傷を想って泣いていた。
ごめん、咲桜。自分が咲桜の傍にいなかったら、こんな辛い思いをさせることもなかったのに。
想いはいつも、咲桜のためにしか動かない。
「……天科サン。これから少しここを離れるから、あんたもここに来んなよ。相手してらんねえ」
「また放浪か? 今度はどこの国だ?」
「放浪じゃねえよ。……ちょっとした、試合終了」