本番当日。
スティーブとリハーサルをするために、レイナは裕と共に日産スタジアムに向かった。
レイナの髪には、タクマからもらったバレッタ。
笑里にバレッタをつけてもらうときに、「お兄ちゃん、今日も見守っていてね」と心の中で祈った。
客席に出てみて、その広さに圧倒された。
武道館より遥かに規模が大きく、メインステージのほかにサイドステージが2つ設置してある。
3つのステージを移動しながら歌うのだと裕は説明してくれた。
「スタンドだけじゃなくて、ステージのまわりにも観客がいるんだよ。あそこをアリーナって言うんだ」
「へええ。あんなところにもお客さんが入るんだあ」
リハーサルが始まると、スタッフが呼びに来た。
「衣装合わせは後にして、先に歌を合わせたいってスティーブが言ってます」
「わかりました」
二人でメインステージに向かうと、そこにはヒカリがいた。
レイナと裕は驚いて顔を見合わせた。
ヒカリは二人を一瞥すると、すぐに顔をそらせる。
通訳らしき男性が、スティーブのスタッフに何か頼んでいるようだ。スタッフは怒ったような顔で、通訳の男性に何やら言っている。
「先に歌うのはレイナさんで、ヒカリさんは後だってスティーブは言っているそうです。その順番を変えるつもりはないって。リハーサルもその順番でやるって言っています」
通訳の男性が困り果てた様子で、ヒカリとマネージャーに説明した。
「待ち時間が長すぎますよ。せめてリハだけ先にしてもらえないかって頼んでみてください」
「だから、さっきから何度もそう頼んでるんですよ。でも、予定を変えるつもりはないって、スティーブは言っているそうです」
ヒカリは苛立ちを隠さないまま、腕組みをしてそのやりとりを聞いている。
「だったら、リハに出なくていいんじゃない? ぶっつけ本番でもいいでしょ」
「そういうわけにはいかないでしょ。こっちが頼み込んで、今日のステージに出させてもらうんだから」
「私は出たいなんて言ってないし」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
ヒカリとマネージャーが言い争っていると、急に袖が騒がしくなった。
スティーブが現れ、ステージは静まり返った。
実物は動画で見る以上に巨体なので、立っているだけで存在感がある。
黒いサングラス越しにヒカリたちを睨むと、ヒカリは顔をこわばらせた。
スティーブはヒカリの前を素通りし、レイナに「ハイ、レイナ!」と笑顔で歩み寄った。
手を差し出されて、レイナも右手を出すと、大きな温かい手で包み込んで握手した。
何か言われたが聞き取れないでいると、「レイナに会えてよかったって。会うのを楽しみにしてたんだって言ってるよ」と裕が通訳してくれた。
レイナは「私も!」と笑顔で返した。
スティーブは裕とも握手を交わした。
「おっきい人だね。ビックリした!」
裕はレイナの言葉を訳して伝えた。
スティーブは朗らかに笑った。
「子供のころからビッグボーイって呼ばれてたんだって。日本は建物も乗り物も小さいから、頭をぶつけてばかりだって言ってるよ」
スティーブが頭を痛そうにさすっているので、レイナは笑い声をあげた。
スティーブとリハーサルをするために、レイナは裕と共に日産スタジアムに向かった。
レイナの髪には、タクマからもらったバレッタ。
笑里にバレッタをつけてもらうときに、「お兄ちゃん、今日も見守っていてね」と心の中で祈った。
客席に出てみて、その広さに圧倒された。
武道館より遥かに規模が大きく、メインステージのほかにサイドステージが2つ設置してある。
3つのステージを移動しながら歌うのだと裕は説明してくれた。
「スタンドだけじゃなくて、ステージのまわりにも観客がいるんだよ。あそこをアリーナって言うんだ」
「へええ。あんなところにもお客さんが入るんだあ」
リハーサルが始まると、スタッフが呼びに来た。
「衣装合わせは後にして、先に歌を合わせたいってスティーブが言ってます」
「わかりました」
二人でメインステージに向かうと、そこにはヒカリがいた。
レイナと裕は驚いて顔を見合わせた。
ヒカリは二人を一瞥すると、すぐに顔をそらせる。
通訳らしき男性が、スティーブのスタッフに何か頼んでいるようだ。スタッフは怒ったような顔で、通訳の男性に何やら言っている。
「先に歌うのはレイナさんで、ヒカリさんは後だってスティーブは言っているそうです。その順番を変えるつもりはないって。リハーサルもその順番でやるって言っています」
通訳の男性が困り果てた様子で、ヒカリとマネージャーに説明した。
「待ち時間が長すぎますよ。せめてリハだけ先にしてもらえないかって頼んでみてください」
「だから、さっきから何度もそう頼んでるんですよ。でも、予定を変えるつもりはないって、スティーブは言っているそうです」
ヒカリは苛立ちを隠さないまま、腕組みをしてそのやりとりを聞いている。
「だったら、リハに出なくていいんじゃない? ぶっつけ本番でもいいでしょ」
「そういうわけにはいかないでしょ。こっちが頼み込んで、今日のステージに出させてもらうんだから」
「私は出たいなんて言ってないし」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
ヒカリとマネージャーが言い争っていると、急に袖が騒がしくなった。
スティーブが現れ、ステージは静まり返った。
実物は動画で見る以上に巨体なので、立っているだけで存在感がある。
黒いサングラス越しにヒカリたちを睨むと、ヒカリは顔をこわばらせた。
スティーブはヒカリの前を素通りし、レイナに「ハイ、レイナ!」と笑顔で歩み寄った。
手を差し出されて、レイナも右手を出すと、大きな温かい手で包み込んで握手した。
何か言われたが聞き取れないでいると、「レイナに会えてよかったって。会うのを楽しみにしてたんだって言ってるよ」と裕が通訳してくれた。
レイナは「私も!」と笑顔で返した。
スティーブは裕とも握手を交わした。
「おっきい人だね。ビックリした!」
裕はレイナの言葉を訳して伝えた。
スティーブは朗らかに笑った。
「子供のころからビッグボーイって呼ばれてたんだって。日本は建物も乗り物も小さいから、頭をぶつけてばかりだって言ってるよ」
スティーブが頭を痛そうにさすっているので、レイナは笑い声をあげた。