ヒカリのライブに出る日。
レイナは朝早くに目が覚めて、河原に行き、予行演習を兼ねてその日披露する曲を歌った。
澄みきった空が広がり、朝から気持ちよく晴れている。
――お兄ちゃん。私、今日、ステージで歌うんだよ。天国から見ていてね。
空に向かって、高らかに歌いあげる。
水汲みに行くために小屋に戻る途中、アミに会った。
「おっはよー」
レイナが声をかけると、アミは一瞬おびえたような表情になり、レイナに駆け寄って腰にしがみついた。
「何、何、どうしたの?」
レイナが顔をのぞき込むと、アミは涙を浮かべながら、「あーあー」と訴えかける。
「もしかして、お父さんにまた暴力振るわれたの?」
レイナが声を潜めると、アミは激しく頭を振る。
レイナはアミの袖をまくったり、背中やお腹、足も確認したが、どこにも新しい傷はない。
――そういえば、ここんところずっと、アミの様子がおかしかったかも。私がレッスンから帰って来たら、抱きついて離れなくなるし。昼間もずっと小屋の外で待ってるって、トムが言ってたっけ。私がいなくて寂しいのかと思ったけど……。
レイナはアミの目を見た。
「ねえ、アミ、何かあったの?」
アミはためらった後、小さくコクンとした。
「何があったの? 私に教えられる?」と聞いても、アミは話せないし、字も書けない。どうやって話を聞き出せばいいのか。
レイナが考え込んでいると、「やあ、おはよう」と背後から声がした。振り返ると、山田がニヤニヤ笑いながら立っている。
アミが息を呑んで、レイナにしがみついた。
「二人とも、朝早いねえ。えらいえらい」
山田が近寄ってくると、アミはレイナの背後に隠れた。
「あれ、人見知りしてるのかなあ」
レイナは立ち上がり、山田を手で制した。
「アミが嫌がってるみたいだから、近づかないで」
「そんなあ、おじさん、そんなに怖くないよ? 誤解してるんじゃないかな」
山田がなおもニヤニヤしてると、「おい、何してるんだよ?」とクロを連れたジンが駆け寄ってきた。
山田は小さく舌打ちし、「さ、顔でも洗って来るかな」と水飲み場に向かった。
「どうした?」
「分かんない。なんか、アミがあの人におびえてて」
「アミ、あいつに何かされたのか?」
ジンが聞いても、アミは涙ぐんで震えているだけだ。
「何かあったのかもしれないな。じゃあ、今日は一日、俺かトムと一緒にいるんだぞ。マサじいさんのところにいてもいいし。絶対に一人になるな。分かったな?」
ジンの言葉にアミは深くうなずいた。
レイナは朝早くに目が覚めて、河原に行き、予行演習を兼ねてその日披露する曲を歌った。
澄みきった空が広がり、朝から気持ちよく晴れている。
――お兄ちゃん。私、今日、ステージで歌うんだよ。天国から見ていてね。
空に向かって、高らかに歌いあげる。
水汲みに行くために小屋に戻る途中、アミに会った。
「おっはよー」
レイナが声をかけると、アミは一瞬おびえたような表情になり、レイナに駆け寄って腰にしがみついた。
「何、何、どうしたの?」
レイナが顔をのぞき込むと、アミは涙を浮かべながら、「あーあー」と訴えかける。
「もしかして、お父さんにまた暴力振るわれたの?」
レイナが声を潜めると、アミは激しく頭を振る。
レイナはアミの袖をまくったり、背中やお腹、足も確認したが、どこにも新しい傷はない。
――そういえば、ここんところずっと、アミの様子がおかしかったかも。私がレッスンから帰って来たら、抱きついて離れなくなるし。昼間もずっと小屋の外で待ってるって、トムが言ってたっけ。私がいなくて寂しいのかと思ったけど……。
レイナはアミの目を見た。
「ねえ、アミ、何かあったの?」
アミはためらった後、小さくコクンとした。
「何があったの? 私に教えられる?」と聞いても、アミは話せないし、字も書けない。どうやって話を聞き出せばいいのか。
レイナが考え込んでいると、「やあ、おはよう」と背後から声がした。振り返ると、山田がニヤニヤ笑いながら立っている。
アミが息を呑んで、レイナにしがみついた。
「二人とも、朝早いねえ。えらいえらい」
山田が近寄ってくると、アミはレイナの背後に隠れた。
「あれ、人見知りしてるのかなあ」
レイナは立ち上がり、山田を手で制した。
「アミが嫌がってるみたいだから、近づかないで」
「そんなあ、おじさん、そんなに怖くないよ? 誤解してるんじゃないかな」
山田がなおもニヤニヤしてると、「おい、何してるんだよ?」とクロを連れたジンが駆け寄ってきた。
山田は小さく舌打ちし、「さ、顔でも洗って来るかな」と水飲み場に向かった。
「どうした?」
「分かんない。なんか、アミがあの人におびえてて」
「アミ、あいつに何かされたのか?」
ジンが聞いても、アミは涙ぐんで震えているだけだ。
「何かあったのかもしれないな。じゃあ、今日は一日、俺かトムと一緒にいるんだぞ。マサじいさんのところにいてもいいし。絶対に一人になるな。分かったな?」
ジンの言葉にアミは深くうなずいた。