「ねえ、昨日、こんな服を買っちゃったんだけど……レイナちゃんにピッタリかなって思って」
 笑里はセーターとスカート、コートを紙袋から出して、いそいそとソファに並べた。
「レイナちゃん、いつもボロボロの服を着てるでしょ? スカートも履いたことがないみたいだし。もったいないって思うのよね。あんなにキレイなのに。こういう服を着たら、その辺を歩いてる子より、ずっとキレイになると思うの」
 裕は複雑そうな表情で、腕を組んだ。
「後、髪ももっとちゃんと整えて、こういうアクセをつければ」
 他にも買ってきたものを拡げている笑里を見て、裕はため息をついた。

「笑里、気持ちは分かるけど。あの子が住んでいるのはゴミ捨て場なんだ。ゴミ捨て場でこんなキレイなカッコをしてたら、変に目立ってしまう。レイナにあげるわけにはいかないよ」
「だって、あの子はもっとまともなカッコをするべきだって思わない? あんなに才能があって、あんなにいい子なのに」
「分かるよ。あの子はいつかゴミ捨て場から羽ばたくときがくる。でも、それは今すぐじゃない。あの子がゴミ捨て場から離れたときに、こういうものをプレゼントするべきなんだ。それまでは待とう」

 裕が冷静に言い聞かせると、笑里はソファに座り込んだ。
「でも、レイナちゃんが、あまりにも不憫で」
 涙ぐんでいる。
 裕は隣に腰を下ろし、笑里の肩を抱いた。
「花音が生きてたら、あの子と同じぐらいの年なのに……」
 笑里は肩を震わせて泣き出した。
「分かる、分かるよ。僕も何度もそう思っているから。だから、レイナが幸せになれるように、全力で力を貸そう。いつだって、レイナの味方でいてあげよう。それが今の僕らにできることじゃないかな?」
 裕は優しくなだめる。
 足元ではベルが心配そうに二人を見上げている。