それからというもの、青龍帝は、常に少華をそばに置きたがった。
 その溺愛ぶりは凄まじく、周囲が陛下は男色家だったのだと噂するほどに――。
 
 そんなある日のこと――。

「少華、陛下の弱みを見つけることは出来たのか?」

 父である丞相が彼女の前に現れたのだった。

「父上、その……」

 青龍帝を過去視した際に、丞相である父の方こそが、国家転覆を狙っているのではないかとの疑念がわいていたからだった。

「ちゃんと仕事をするんだよ、少華――そうでないと、儂は――」
 
 その時、父が娘の腕を掴んだ。

(あ――)

 彼女の中に一気に記憶が流れこんでくる。

(そんな、まさか……!)

 衝撃で――少華の顔が青ざめていく。

(どうにかして巫女を輩出したいからと、縁戚だった母様を連れ去るようにして妻にした……私は母様の連れ子で……なのに、奇妙な能力をぶきみがって、王都外れの村に追いやっていて……)

 しかも――。

(私を利用して――陛下の残虐ぶりを世間に広めて、皆を味方につけて――国家転覆を図ろうとしているなんて……!)

 父の優しくて穏やかな表情に騙されて、ずっと――。

 微笑んだまま、彼は口を開く。

「そういえば、少華は過去が視えるんだったな」

(あ……)

 急に肺で呼吸が出来なくなる。

 父に口を塞がれると、一気に気が遠くなったのだった。