その晩、陛下の寝所に灯りを分けた後のこと――。

 少華は彼に声をかけた。

「陛下」

「なんだ?」

 彼の揶揄うような瞳を真っすぐに見据えて、少華は告げた。

「貴方は、未来が視えるのですね」

「――っ……!」

「だから、たくさんの公子たちの中で生き延びることができて、皇帝になった」

「俺の背に触れた時に気付いたのか……?」

「はい……」

 彼に嘘を言っても一緒だ。

「そうだ――この妙な力のおかげで、どうにかなってきた……だけど、肝心要の際に役に立たなかった……母の死を避けることは出来なかったんだからな」

 陛下の未来視も、どうやら常に発動するものではないようだ。

「しかも、信じていた相手が妙な企みをしてくる時ばかり、視えるんだ」

 それで人を信じられなくなっていったのね……。

「だが、お前は違う。馬鹿正直で、未来が視えたとしても、俺を裏切るような真似はしない」

 いつの間にか、彼に抱き寄せられていた。

「少華……」

 何も言わずに抱きしめてくる彼の背を、彼女はそっと抱きしめ返したのだった。