流夜と咲桜ちゃんの偽婚約? 仮婚約? の発端はマナちゃんだ。

双方の事情を知っていたとはいえ……よくこんな縁組を考えたよね。

「なんとなく?」

「………」

……理由、それでいいの?

「咲桜ちゃんなら、流夜くんみたいなのも見捨てないかなーと思ったのよ」

「……つまりは咲桜ちゃんの優しさに付け込んだ、みたいなこと言ってるけど、いいの?」

「簡単に言うとそうね」

「咲桜ちゃんに申し訳ないとか思わなかったの?」

「少しは思ったけど……今、順調ならいいじゃない。降渡くんから報告もらってるわよ?」

「まあ……ねえ……」

二人の仲は順調だ。

流夜が無性愛者(エイセクシャル)――ヒトを愛することが出来ないタイプ――じゃなかったのも発見の一つだってぐらいだし。

そんぐらいあいつ、ヒトはただのサンプルだったし。

咲桜ちゃんにはバカみたいに惚れ込んでるし。

「今になると、上手い縁組だったってこと?」

「そうだといいわね」

自分の成就は願わないくせに、他人のことには世話焼くんだからなあ。

「どんなケーキ作ってくれてるのかなあ」

「そうだねー」

にこにこしているマナちゃん。

僕も成就なんて願わないから。

願わくば、命を生き切ってほしい。

自分の手で、終わらせないで。

「言い忘れてたわ。誕生日おめでとう、吹雪」

「ああ、僕も言ってなかったね。おめでとう、マナちゃん」

……おめでとう。マナちゃん。