流夜がずっと抱きしめて放してくれない。
陶然とするあたたかさの中で、咲桜は瞼をおろした。
ずっと望んでいたもの。
「咲桜……少し、変わったな」
「えっ、……りゅっ……」
「前は可愛いとしか思わなかったけど……美しくなったな」
……これが、『無表情以外見たことない』と言われる人の台詞なのか。
たまに流夜が学生時代と違う人なんじゃないかと思う。
「あの、そういうこと言われると……」
恥ずかしいです……小さく言うと、流夜はふっと笑った。
「恋人に言わないでどうするんだ?」
「……恋人?」
「すぐに夫を名乗っていいのか?」
「えと……」
そうでした。今さっきプロポーズに答えたばかりだった。
困る咲桜の背中を、流夜がゆっくり叩いた。
「取りあえず今日、在義さんに話しに行って、からだな」