「凄く頑張ってるし、努力もしてる……よね。他のみんなだって、最近は宮野くんのこと見直したって、ちゃんと褒めてたよ。そんな風に思ってるのは、私だけじゃないから」

 奏から話しかけられたことが嬉しいのに、その言葉にももっと嬉しくなる。

「ありがとう。そう言ってもらえると、僕もうれしいよ。奏もずいぶん早くなったね」

 彼女はちょっとだけ、にこっと微笑むと、顔の半分を水に漬けぼこぼこさせながら言った。

「私が元気になれたのも、宮野くんのおかげだよ」

 その声は水の泡と一緒になって、すぐに消えてしまったけど、僕にはちゃんと聞き取れた。
泳ぎ去る彼女の水しぶきを見ながら、僕はなんだか頭がクラクラしている。
熱でもあるのかな。心臓だって、なんだかドキドキしている。

 僕はビート板に浮かんで、少し休むことにした。
真夏の太陽の下、小さなプールに沢山の水泳部員たちが泳いでいる。
この最近、ずっと奏以外にもアドバイスをしてきたおかげで、泳ぎの上手い人間とそうでない人間とは、ちゃんと分かるようになってきた。
飛び込み台からバシャリと飛び込む音がして、振り返る。
岸田くんだ。

 人間の泳ぎ方にあまり詳しくなかった僕でも、彼が上手なのはすぐに分かった。
泳ぐスピードの速さだけじゃない。
泳ぐための動作、その流暢で無駄のない体の動きが、彼個人の能力を明確に表している。
他の人とは全然違う。
僕も岸田くんみたいに泳げてるのかな。
彼のようになりたいと、ちょっとだけそんなことを思った。