翌日、僕は岸田くんに呼ばれて、水泳部のみんなの前に立たされた。

「今日の練習から、宮野が全体のコーチをしてくれることになった」

 僕の突然の気の変わりように、全体がざわざわしている。
喜んでいるのが半分。
驚いているのが半分って感じ。

「聞きたいことがあったら、なんでも宮野に聞いてくれ。ヒマそうにしてる時に声かければ、それでいいってことになってるから」

 集まって聞いていた水泳部のみんなは、それにちょっと笑っていた。
その笑い方は、いつも教室で向けられる、僕への笑い方とは少し種類の違うような気がした。
僕はそれに嬉しいような悲しいような、少し複雑な気分になる。
ビート板に浮かんでいる時に色々話しかけられ、僕はそれに知っているような分かったような返事を返す。

「凄いじゃない。宮野くん、どうしたの?」

 奏は僕を見上げ、うれしそうにそう言った。

「あんなに嫌がってたのに。それでもやっぱり、いつかはみんなのためにやってくれるだろうとは思ってたけどね。もしかして、岸田くんの説得に負けた?」

「奏は、僕がこうすることはうれしい?」

「もちろんだよ。ちょっと見直した」