楓と話しながら電車に乗り学校に着いた。
もちろん楓は学校に着くなり女子にも男子にも先輩にも囲まれた。そうとうな人気ぶりでいらっしゃる。私はというと仲のいい2人に話しかけられた。そこから私と楓は別行動。楓は楓の友達と私は私の友達と会話を始める。
「やっぱり紫音と一ノ瀬は仲良いね〜」
楓と別れた後(みお)に話しかけられた。
「別に普通だよ?」
「やっぱり一ノ瀬は紫音のことが好きなんじゃない?」
なわけない。
あいつの目に私は映ってない。あいつの目に映るのはただ1人だけ。
「楓は私なんて眼中に無いでしょ」
笑いながらいつものように返す。そう言った瞬間、話しかけられた。振り向くとそこには綺麗な顔で
「やっほ、紫音ちゃん」
雨谷(あまや)先輩が立っていた。相変わらず可愛らしい顔立ちで羨ましくなる。そんなこと言わないけど。
「先輩!おはようございます!」
「うん、あれ楓くんは?一緒じゃないの?」
ああ。また楓か。私と楓をセットにしないで欲しい。確かによく一緒にいるし仲もいい。
でも楓が私の願いをなんでも叶えてくれるわけでもいつもお互いの居場所を知っている訳でもない。もちろん雨谷先輩はそんなつもりで言ったんじゃないだろうし先輩が良い人ってことは私も重々承知している。だからこそ怖いのだ。雨谷先輩が“あっち”側に行ってしまうのが。
「あ〜楓ならあっちで囲まれてますよ」
そう言って楓の方を見た瞬間ギクリとした。
楓がこっちを見つめているのだ。いや、正確には雨谷先輩を。