すると突然、楓に腕を引っ張られ近くに抱き寄せられた。
「は?何?急に」
「危ねーなあのおっさん」
「だから、何よ」
おっさん?危ねー?なんの話か全く分からない。
困惑してる私の腕を離して楓が指を指した。
「ほら、あそこにいるおっさん」
「あいつがお前にぶつかりそうだったんだよ」
「あーね、ありがと」
ほんとにそうゆうとこ。楓の苦手なところ。
誰でも助ける。誰でも距離が近い。男だろうが女だろうが関係ない。だから楓はめちゃくちゃモテる。だけど多分モテる理由はそれだけじゃない。一ノ瀬楓というかっこいい名前に加えて誰がどう見てもかっこいいと言われるような理想的な顔立ち。これだけでも十分モテる要素はあるのにおまけ運動神経抜群、定期テストは毎回学年1位、やらせればなんだってこなす完璧ぶり。神様はどれだけこいつが好きなんだか。こんなの好きになるなってほうが難しいだろう。まさに少女漫画のヒーロー。でも私はだれでも助ける部分に関しては楓が苦手だ。総合的にみたら楓のことは嫌いじゃない。でもそこだけはどうしても好きになれなかった。当然、楓には彼女がいたことだってある。だけど今は恋愛とか彼女はいらないらしい。なんでかは聞かない。それよりも聞いちゃいけない気がした。わたし達はある程度の位置でお互い線を引いている。入って来て欲しくないところ。楓は恋愛に関してだろう。だから私たちには目に見えない壁がある。お互いに触れて欲しくない部分は避けて会話する。複雑な関係。