「・・・でもまさか未羅もそんな運命を抱えていたとは思いませんでした」
全てが終わった今、それらのことは僕の中ですっかり思い出となっていて、怒りや後悔などは全く感じなかった。
「・・・申し訳ございません。
“運命”は該当者にしか言えないものなので。」
「はい、分かっています。
悪いのは僕です。
今思えば、あの時に違和感に気付くべきだったんです。
なぜ付き合うこととクリスマスの日に事故に遭うことが前提で話が進んでいるのかということに。
でもあの時は信じられないことの連続で、そんな単純な事にも気付く余裕がなかった。」
「・・それは当然のことです。
まず、あの場で冷静に話をできたこと自体を私は褒めてしかるべきだと思いますよ。」
シイナさんはどこまでも優しかったし、その表情は常に何かを悔いているようだった。
きっと本気で救われてほしいと思っているからこそ、自分の“上手く立ち回れない立場”に日々苦しめられているのだろう。
「・・・あ、そういえば記憶を保持することを未羅は拒みませんでしたか?」
「始めはそうでした。
でも、最後は自ら望んでそうしましたよ。
『葉山さんを巻き込みたくない』とおっしゃっていました。」
それを聞いて、僕は胸に温かさを感じた。
「・・・それは二周目の随所で伝わりました。
今思い返すと、未羅は相当悩んでいたと思います。
だからこそ、今はこの現実を受け止めきれるかが心配です。
・・・まあ、死者にできることなんて何もないんですけどね」
僕が沈んだ空気を相殺しようとしておどけると、シイナさんは複雑な笑顔を見せた。
そして、その笑顔は徐々に崩れていき、ついに一筋の線が目から頬に伸びた。それは、初めて見るシイナさんの涙だった。
それと同時に、自分の体が徐々に透け始めていることに僕は気付いた。
「・・時間みたいですね」
僕がそう言うとシイナさんはただ黙ったまま頷いた。
「そんなに落ち込まないでください。
毎回こうなるんですか?」
僕が笑いながら訪ねると、「そんなことありません」と鼻をすすった。
「あははっ。
きっとシイナさんこの仕事向いてないですよ」
「本当にあなた方は・・・。
まったくです。
僕が元気付けられてしまうとは」
笑わせようとしたつもりが、シイナさんは何故か余計に涙を流した。
「最後は、背を向けて歩かせてください」
そう言って僕は椅子から立ち上がりシイナさんの横を通り過ぎていき、少し歩いたところで最後の疑問を投げかけた。
全てが終わった今、それらのことは僕の中ですっかり思い出となっていて、怒りや後悔などは全く感じなかった。
「・・・申し訳ございません。
“運命”は該当者にしか言えないものなので。」
「はい、分かっています。
悪いのは僕です。
今思えば、あの時に違和感に気付くべきだったんです。
なぜ付き合うこととクリスマスの日に事故に遭うことが前提で話が進んでいるのかということに。
でもあの時は信じられないことの連続で、そんな単純な事にも気付く余裕がなかった。」
「・・それは当然のことです。
まず、あの場で冷静に話をできたこと自体を私は褒めてしかるべきだと思いますよ。」
シイナさんはどこまでも優しかったし、その表情は常に何かを悔いているようだった。
きっと本気で救われてほしいと思っているからこそ、自分の“上手く立ち回れない立場”に日々苦しめられているのだろう。
「・・・あ、そういえば記憶を保持することを未羅は拒みませんでしたか?」
「始めはそうでした。
でも、最後は自ら望んでそうしましたよ。
『葉山さんを巻き込みたくない』とおっしゃっていました。」
それを聞いて、僕は胸に温かさを感じた。
「・・・それは二周目の随所で伝わりました。
今思い返すと、未羅は相当悩んでいたと思います。
だからこそ、今はこの現実を受け止めきれるかが心配です。
・・・まあ、死者にできることなんて何もないんですけどね」
僕が沈んだ空気を相殺しようとしておどけると、シイナさんは複雑な笑顔を見せた。
そして、その笑顔は徐々に崩れていき、ついに一筋の線が目から頬に伸びた。それは、初めて見るシイナさんの涙だった。
それと同時に、自分の体が徐々に透け始めていることに僕は気付いた。
「・・時間みたいですね」
僕がそう言うとシイナさんはただ黙ったまま頷いた。
「そんなに落ち込まないでください。
毎回こうなるんですか?」
僕が笑いながら訪ねると、「そんなことありません」と鼻をすすった。
「あははっ。
きっとシイナさんこの仕事向いてないですよ」
「本当にあなた方は・・・。
まったくです。
僕が元気付けられてしまうとは」
笑わせようとしたつもりが、シイナさんは何故か余計に涙を流した。
「最後は、背を向けて歩かせてください」
そう言って僕は椅子から立ち上がりシイナさんの横を通り過ぎていき、少し歩いたところで最後の疑問を投げかけた。