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「あれ?・・なぜあなたが。
・・・初めまして。私“人類可能性管理局”のシイナと申します。
どうぞ、目を開けてください。」
その声により目を開けたとき、そこには僕とシイナさんの二人しかいなかった。
「ここは、どこですか?
僕は今確か火災で・・・」
「・・あなたは冷静なのですね。
大抵の人は、最初は理解が追い付かない現象にひどく取り乱すんですが」
「まあ、少なくとも混乱はしています」
「ふっ・・そうは見えませんが。
変わったお方ですね」
シイナさんは初対面の人に警戒させないような気さくな笑顔でそう言った。
これが僕とシイナさんのファーストコンタクトだった。
時間差で命を落とした僕と未羅。
未羅がこの空間に来るまでの数分間、僕とシイナさんには二人だけの時間が存在した。
「以上が“やり直し”の概要になります。何か不明な点はございますか?」
僕はシイナさんから、今起こっていること、そして”やり直し“について一通り説明を受けた。
「じゃあ、僕の未来にそんな大層な可能性があるってことですか?」
「・・ええ、どうやらその様です。」
シイナさんはどこか晴れない表情でそう答えた。
僕も全く同じ顔をしていたと思う。理由は至って単純だった。
自分が何か素晴らしい偉業などを成し遂げるとは到底思えないからだ。
「何かの間違いではないんですか?」
改めて問い直した。
「いえ、それはあり得ません。
私たちの組織の計算は絶対です。
万が一にでも誤った計算をすることはありません。
なので、正真正銘あなたは“選ばれた人”なのです。
そこはご安心ください」
どうやら、彼は自分の組織に絶大な信頼を置いているようだった。
そう述べた彼の顔には先ほどのような曇りはなく、僕の目を真っ直ぐ見据えていた。
「では、早速ですが“やり直し”を行うかどうか、お答えをいただけますか?」
「まあ、そんな二度と訪れないようなチャンスを棒に振るおうとは思いません。
お願いします」
僕は彼の目を見据え返してそう言った。
「良いお答えを聞けて何よりです。
では、始めるにあたり重要なことを二つだけお伝えさせていただきます。
一つ目は、“やり直し”をしていることを他人に知られてはならない。
これが何故かは、説明せずともあなたならお分かりになると思います」
僕はそれを聞き、首を縦に一度だけ振った。
「ありがとうございます。
では、二つ目についてです。
それはあなたの―――・・」
シイナさんはまるで何かに気付いたかのように突然話すのを止めて、静止した。
そして数秒後、微かな声でこう言った。
「・・そういうことでしたか」
「はい?」
僕が聞き直すとシイナさんはこう言い直した。
「葉山さん、急遽予定が変わりました。今から約五分後に冬野さんがここに来ます。」
「え・・・それってつまり、未羅も死んだってことですか?」
「はい・・。残念ながら」
僕は恐れていたことが起きてしまい動揺すると同時に一つの疑問が生じた。
「でも、ここに来るってことは彼女も“選ばれた”ということですよね?」
「はい。そういうことになります」
説明時に「選ばれる人はその条件の厳しさ故、極々限られた人のみだ」と言われたことがあり、この偶然には驚きを隠せなかった。
「そんなことってあり得るんですか?」
僕が疑うような眼でシイナさんに尋ねると、シイナさんは深刻な顔をしてこう言った
「あり得なくはないですが、約百年近くこの仕事をしてきて、このようなケースになった前例は一度しかありません。
そしてこのような状況になった場合、先程よりルールが少しややこしくなります。
冬野さんがここに来るまで、あまり時間がありません。
二人だけの間に、あなたにお伝えしなければならないことを一度すべて話してしまうので、よく聞いてください。
よろしいですか?」
シイナさんの深刻な顔に息をのみ、恐る恐る首を縦に振った。
それから僕は、未羅が“この空間”に来る前に一通り“二人でやり直しを行うこと”の説明を受け、その難しさや弊害などを詳しく聞いた。
二人同時に同じ空間に送られてくる原理。
二人で行う場合、どちらかの記憶を消さなければならないこと。
記憶を消す対象は操作できること。
僕らの場合、戻るのは未羅が転校してきた日であること。
そして、可能性の樹形図には“運命”と呼ばれるポイントが存在すること。
それらを聞き、僕はいかに僕らが希少な例であるかを思い知った。
「あれ?・・なぜあなたが。
・・・初めまして。私“人類可能性管理局”のシイナと申します。
どうぞ、目を開けてください。」
その声により目を開けたとき、そこには僕とシイナさんの二人しかいなかった。
「ここは、どこですか?
僕は今確か火災で・・・」
「・・あなたは冷静なのですね。
大抵の人は、最初は理解が追い付かない現象にひどく取り乱すんですが」
「まあ、少なくとも混乱はしています」
「ふっ・・そうは見えませんが。
変わったお方ですね」
シイナさんは初対面の人に警戒させないような気さくな笑顔でそう言った。
これが僕とシイナさんのファーストコンタクトだった。
時間差で命を落とした僕と未羅。
未羅がこの空間に来るまでの数分間、僕とシイナさんには二人だけの時間が存在した。
「以上が“やり直し”の概要になります。何か不明な点はございますか?」
僕はシイナさんから、今起こっていること、そして”やり直し“について一通り説明を受けた。
「じゃあ、僕の未来にそんな大層な可能性があるってことですか?」
「・・ええ、どうやらその様です。」
シイナさんはどこか晴れない表情でそう答えた。
僕も全く同じ顔をしていたと思う。理由は至って単純だった。
自分が何か素晴らしい偉業などを成し遂げるとは到底思えないからだ。
「何かの間違いではないんですか?」
改めて問い直した。
「いえ、それはあり得ません。
私たちの組織の計算は絶対です。
万が一にでも誤った計算をすることはありません。
なので、正真正銘あなたは“選ばれた人”なのです。
そこはご安心ください」
どうやら、彼は自分の組織に絶大な信頼を置いているようだった。
そう述べた彼の顔には先ほどのような曇りはなく、僕の目を真っ直ぐ見据えていた。
「では、早速ですが“やり直し”を行うかどうか、お答えをいただけますか?」
「まあ、そんな二度と訪れないようなチャンスを棒に振るおうとは思いません。
お願いします」
僕は彼の目を見据え返してそう言った。
「良いお答えを聞けて何よりです。
では、始めるにあたり重要なことを二つだけお伝えさせていただきます。
一つ目は、“やり直し”をしていることを他人に知られてはならない。
これが何故かは、説明せずともあなたならお分かりになると思います」
僕はそれを聞き、首を縦に一度だけ振った。
「ありがとうございます。
では、二つ目についてです。
それはあなたの―――・・」
シイナさんはまるで何かに気付いたかのように突然話すのを止めて、静止した。
そして数秒後、微かな声でこう言った。
「・・そういうことでしたか」
「はい?」
僕が聞き直すとシイナさんはこう言い直した。
「葉山さん、急遽予定が変わりました。今から約五分後に冬野さんがここに来ます。」
「え・・・それってつまり、未羅も死んだってことですか?」
「はい・・。残念ながら」
僕は恐れていたことが起きてしまい動揺すると同時に一つの疑問が生じた。
「でも、ここに来るってことは彼女も“選ばれた”ということですよね?」
「はい。そういうことになります」
説明時に「選ばれる人はその条件の厳しさ故、極々限られた人のみだ」と言われたことがあり、この偶然には驚きを隠せなかった。
「そんなことってあり得るんですか?」
僕が疑うような眼でシイナさんに尋ねると、シイナさんは深刻な顔をしてこう言った
「あり得なくはないですが、約百年近くこの仕事をしてきて、このようなケースになった前例は一度しかありません。
そしてこのような状況になった場合、先程よりルールが少しややこしくなります。
冬野さんがここに来るまで、あまり時間がありません。
二人だけの間に、あなたにお伝えしなければならないことを一度すべて話してしまうので、よく聞いてください。
よろしいですか?」
シイナさんの深刻な顔に息をのみ、恐る恐る首を縦に振った。
それから僕は、未羅が“この空間”に来る前に一通り“二人でやり直しを行うこと”の説明を受け、その難しさや弊害などを詳しく聞いた。
二人同時に同じ空間に送られてくる原理。
二人で行う場合、どちらかの記憶を消さなければならないこと。
記憶を消す対象は操作できること。
僕らの場合、戻るのは未羅が転校してきた日であること。
そして、可能性の樹形図には“運命”と呼ばれるポイントが存在すること。
それらを聞き、僕はいかに僕らが希少な例であるかを思い知った。