さあ、私の物語もそろそろ終わりが近い。
 どうやって引き延ばそうとしても、始まった時から分かり切っていた結末が近づくにつれ、再び私の世界から色が消えていった。
 そして、空人君との関係のことについても、答えを出さなければいけない時が近づいていた。
 義務を百パーセントこなしつつ、やりたいことを四割くらい実現する。
 その言葉に従い、空人君と付き合い始めた。
 いや、実際は四割以上楽しんだと思う。
 たくさんの幸せを貰った。
 でもだからこそ、十分楽しんだからこそ、目的は必ず果たさなければならなかった。
 そうでなければ、私が“やり直し”をした意味がなくなってしまう。
 シイナさんに合わせる顔がなくなってしまう。
 夏休みが終わり二度目の三年後期に入った私が、刻一刻と近づく“運命”に対してどのような考えを持って、どんな答えを出し、クリスマスの日に何をしていたのか、そのことについて、今から話します。
 これは、かけがえのない優しさに触れることで絶対的な答えを見つける事ができた、少女の物語。
 そして同時に、どうしようもなく王子様を愛してしまった愚かなお姫様の物語です。
◆◇◆◇
 夏休みが終わり、いよいよ無視する事が出来ないくらい存在が大きく膨れ上がった“それ”を目の前にまず考えることは、どうやって空人君との関係を終わらせることだった。
 私と同じ立場になったらほとんどの人がまずはこの考えに至ると思う。
 「別れよう」を言えるほど私の心が強ければ全く問題はなかったが、それができなかったから、苦労していた。
 会うたびに切り出そうとはしたが、それはことごとく失敗に終わった。
 まあ、よくある話だと思う。
 そこからどうしていいか分からなくなった私は、結局答えが出せないまま、ただ空人君と距離を置くようになってしまっていた。
 「このまま私に愛想付かせてくれたりしないかな」なんて考えてみる。
 ほんとはそんなことないって分かってるのに。
 久しぶりに壱也君と二人で話す機会が出来たのはそんな時だった。
 一年前と同じ本屋でばったり会った。
「お、未羅ちゃんじゃん。
なんか、前にもこんなことあったな」
「壱也君。
確かに、そんなこともあったね。」
 私が笑いながら言うと、壱也君は私が手にしている本を覗いてきた。
「まーた小説かぁ。
いいなぁ余裕あって」
「壱也君は?何買いに来たの?」
「今の流れだと赤本一択だろ。
まさか、必死な俺を馬鹿にしてるなぁ?」
 おどけたように壱也君は言った。
「あははっ。してるかも。
・・・でも、私は余裕があるわけじゃないよ」
 ただ意味がないだけ。
 とは口に出さなかった。
「全く、相変わらず俺に対しては冷たいよなぁ。
・・・なんか、一年前の未羅ちゃんと会話してるみたいだな」
「え?」
 さらっと触れてほしくないことに触れられた私は、白を切った。
「なんか、あの頃に逆戻りしてる感じがするわ。」
 後ろにある赤本コーナーを見ながら壱也君はつぶやいた。
「はぁ・・・演技するのに慣れてきたつもりだったんだけどなぁ。
いよいよ余裕まで無くなってきちゃったかなぁ。」
 壱也君は無言になった。
「ねえ、また相談に乗ってくれる?」
 私が言うと、壱也君は目的の本を手に取り、こう言った。
「あいにく俺は受験勉強で忙しいんでね。
それにお前ら明日記念日だろ?
もう相談する相手は俺じゃないんじゃないか?」
 そう言って壱也君は行ってしまった。
「それができれば苦労しないんだけどさ~・・」
 会計を済ませ、本屋から出ていく壱也君の後ろ姿に放った私の言葉は彼に届くことはなかった。