雪に足を取られ、顔全体がひりひりと痛む。
心臓は体全体を揺らすほど強く脈打ち、鼓膜は破れているのではないか思うほどズキズキ傷んだ。
加えて、たまにマップを確認しないと自分がどこにいるのかもわからないような状況だったが、走り続けた。
ただひたすら走った。
見慣れた道まで出ると、僕は未羅が行きそうな場所を思い浮かべ、虱潰しに回ることにした。
まずは、学校に忍び込み、特別棟四階、教室、屋上と回っていった。
・・いない。
振り返り、廊下についた自分の濡れた足跡を見る。
まるでその分だけ“後悔の影”を残しているようで胸が締め付けられた。
各場所を回るたびに、未羅との思い出がフラッシュバックする。
もし、未羅のしたいことが全部その“運命”に邪魔されていたとしたら、君はその度どれほど辛かったのだろう。
人と関わることが苦手だった僕は、変わっていく自分を実感して、その喜びに夢中になっていた。
君の心の叫びを聞いてあげる事が出来なかった。
君の表面的な可愛さばかりを見ていて、内に隠しているものを見つけてあげる事が出来なかった。
ごめん、ごめん、ごめん。心の中で何回も呟く。
その時思い浮んだのは、初めて会話した時の、何かが溢れだしそうで、どうしようもなく優しくて、それでいて切なさを孕んだあの笑顔だった。
学校を出て、未羅のマンションへ向かう。
体はとうに限界を超えていた僕を突き動かすのは、未羅への思いだけだった。
いつの間に吹雪は収まっていて、辺りは静まり返っている。
自分の上擦った呼吸音と雪を踏む足音だけが虚しく響き渡っていた。
◆◇◆◇
歩くのとほぼ変わらないスピードで、やっとの思いで未羅のマンションに着き、部屋番とインターホンを押したが誰も出ない。
時計は既に八時を回っている。
絶望と虚無感が体を襲ったが、僕の体は動き続けることを使命として与えられたロボットのように止まろうとしなかった。
・・・次はどこだ?
まるでそう考えることが義務のように、朦朧とする意識の中で次に心当たりのある場所を考える。
あぁ、花火大会の高台。
そう思い、一歩踏み出したところで膝から崩れ落ちた。
疲労と寒さで体が動かなくなってしまったようだ。
頼む、この後はどうなってもいいから。
今だけは動いてくれ。
そう思い、電柱にしがみ付きながらやっとの思いで立ち上がる。
離すとまた倒れてしまいそうだ。
・・くそ、もう動けないじゃないか。
どうして僕はいつもこう・・。
悔しさで乾いた涙が再び湧き出てくる。
その時だった。
「・・・空人君?」
道路の反対側から、微かな声が聞こえた気がした。
間違いじゃない。
そこには、僕が会いたくて会いたくて仕方なかった人が立っていた。
たったの数日ぶりのはずだが、もう何年も会えていないような、ずいぶん久しぶりな感じがした。
「あぁ、未羅。未羅・・だよな?
やっと、・・・よかったぁ」
彼女の至って健康そうな姿を見て、再び崩れ落ちた。
「な、なんでここにいるの?」
未羅が明らかに動揺しながらそう聞いてきたのに対し、
「未羅に・・・会いたかったから」
と疲れ切った情けない声で答えた。
「そうじゃないっ!
君はここに居ちゃいけ―――」
「まずはっ!
・・僕の言い分を聞いてほしい。
デートすっぽかされたんだから、これくらいは許してくれ」
未羅の言葉を遮り、冗談半分でそう言うと、未羅は押し黙った。
心臓は体全体を揺らすほど強く脈打ち、鼓膜は破れているのではないか思うほどズキズキ傷んだ。
加えて、たまにマップを確認しないと自分がどこにいるのかもわからないような状況だったが、走り続けた。
ただひたすら走った。
見慣れた道まで出ると、僕は未羅が行きそうな場所を思い浮かべ、虱潰しに回ることにした。
まずは、学校に忍び込み、特別棟四階、教室、屋上と回っていった。
・・いない。
振り返り、廊下についた自分の濡れた足跡を見る。
まるでその分だけ“後悔の影”を残しているようで胸が締め付けられた。
各場所を回るたびに、未羅との思い出がフラッシュバックする。
もし、未羅のしたいことが全部その“運命”に邪魔されていたとしたら、君はその度どれほど辛かったのだろう。
人と関わることが苦手だった僕は、変わっていく自分を実感して、その喜びに夢中になっていた。
君の心の叫びを聞いてあげる事が出来なかった。
君の表面的な可愛さばかりを見ていて、内に隠しているものを見つけてあげる事が出来なかった。
ごめん、ごめん、ごめん。心の中で何回も呟く。
その時思い浮んだのは、初めて会話した時の、何かが溢れだしそうで、どうしようもなく優しくて、それでいて切なさを孕んだあの笑顔だった。
学校を出て、未羅のマンションへ向かう。
体はとうに限界を超えていた僕を突き動かすのは、未羅への思いだけだった。
いつの間に吹雪は収まっていて、辺りは静まり返っている。
自分の上擦った呼吸音と雪を踏む足音だけが虚しく響き渡っていた。
◆◇◆◇
歩くのとほぼ変わらないスピードで、やっとの思いで未羅のマンションに着き、部屋番とインターホンを押したが誰も出ない。
時計は既に八時を回っている。
絶望と虚無感が体を襲ったが、僕の体は動き続けることを使命として与えられたロボットのように止まろうとしなかった。
・・・次はどこだ?
まるでそう考えることが義務のように、朦朧とする意識の中で次に心当たりのある場所を考える。
あぁ、花火大会の高台。
そう思い、一歩踏み出したところで膝から崩れ落ちた。
疲労と寒さで体が動かなくなってしまったようだ。
頼む、この後はどうなってもいいから。
今だけは動いてくれ。
そう思い、電柱にしがみ付きながらやっとの思いで立ち上がる。
離すとまた倒れてしまいそうだ。
・・くそ、もう動けないじゃないか。
どうして僕はいつもこう・・。
悔しさで乾いた涙が再び湧き出てくる。
その時だった。
「・・・空人君?」
道路の反対側から、微かな声が聞こえた気がした。
間違いじゃない。
そこには、僕が会いたくて会いたくて仕方なかった人が立っていた。
たったの数日ぶりのはずだが、もう何年も会えていないような、ずいぶん久しぶりな感じがした。
「あぁ、未羅。未羅・・だよな?
やっと、・・・よかったぁ」
彼女の至って健康そうな姿を見て、再び崩れ落ちた。
「な、なんでここにいるの?」
未羅が明らかに動揺しながらそう聞いてきたのに対し、
「未羅に・・・会いたかったから」
と疲れ切った情けない声で答えた。
「そうじゃないっ!
君はここに居ちゃいけ―――」
「まずはっ!
・・僕の言い分を聞いてほしい。
デートすっぽかされたんだから、これくらいは許してくれ」
未羅の言葉を遮り、冗談半分でそう言うと、未羅は押し黙った。