火花・・・花火・・・花火大会。
まるで連想ゲームのように、暗闇の中手探りで掴んだ紐を辿っていく。
そういえば、未羅が僕と距離を取り始めたのはあの花火大会からだ。
それまでは順調だったし、よく満面の笑顔で、普通の女の子のように無邪気に笑っていた。
・・・え、ちょっと待った。
普通の女の子のように・・?
紐を辿ると、どんどん視界が広がっていく。
普通の女の子には、“普通の女の子のように”という副詞はつけない。
じゃあ、未羅は僕にとって普通の女の子ではなかったのだろうか。
もう少し分かり易く言うと、初めから未羅は僕の中の“普通の女の子”像に当てはまっていなかったのだろうか・・・。
紐の先の視界が広がり切ったとき、僕はカフェを飛び出していた。
カフェの中は静かで分からなかったが、雪は思いのほか強くなっていて、電車は既に止まり、駅は人でごった返していた。
しかし、どうしようか迷っている時間はなかった。
電車に乗れないと分かったら、僕はロータリーまで走り、空車のタクシーに飛び乗った。
「お客さん、行先は?」
運転手の声で我に返り、財布を開ける。
所持金は五千円しかなかった。
「・・五千円で、〇〇高校方面に進めるだけ進んでください。」
運転手がナビで検索すると、
「ずいぶん遠いね。
5千円だと7割くらいまでしか行けないよ。
いいのかい?」
と心配するように聞いてきた。
そんなことわかっている。
電車と車では訳が違うことくらい。
でも、他に選択肢なんてなかった。
「いいんです!・・お願いします!」
湧き上がってくる後悔が声に滲み出ていた。
それを聞いた運転手は、
「・・わかった。」
とだけ言い、車を走らせた。
◆◇◆◇
なぜ今まで気づかなかったのだろう。
いや、なぜ気付いていたのに問題視しなかったのだろう。
そう、心で感じたことは、目で見た情報よりずっと確かだったのだ。
僕はタクシーの中で、一人後悔をしていた。
そうだ。
未羅は最初から“普通の女の子”なんかじゃなかった。
ずっと違和感を抱いていた。
そもそも僕からしたら、出会い方ですら全然普通じゃなかったじゃないか。
夢で聞いた声の持ち主と、夢を見た次の日に出会うなんて出来事を偶然で済ませるべきではなかった。
まさかこんな自分に“特別な何か”なんて起きるわけがない。
そもそも、そんな超自然的な事信じられない。
そうやって最初から自分に思い込ませてしまったことが、最初にして最大のミスだった。
その時に、特別なことだと自覚すべきだった。
これを、“第一の過ち”としよう。
それに、初めて話した時も未羅は僕の机の前に立っていたし、友達になってからは僕に何かを訴えかけるようなメッセージが込められた言動を目の当たりにすることもあった。
まるで、前から僕のことを知っていて、僕にそれを思い出させようとしているような。
僕は未羅に関係する重要なことを忘れてしまっているのではないか。
もしかしたら、僕たちは知り合う前から知り合いだったのではないだろうか。
あまりに不明瞭で非科学的だが、この際そんな常識は一度捨てるべきだろう。
まあそれはさておき、その言動は何かしら重要な意味を持っているに違いない。
もちろんそのことについて何も思わなかったわけじゃない。
それらの言動に対する違和感は常日頃から感じていた。
しかし、“第一の過ち”のせいで、僕の心はすでに深く考えることを放棄していた。
それに加えて、未羅と僕が秘密の共有者になってから今日に至るまでは、今の幸せがこのまま続くならそれでいいだろう、という“甘え”がいつの間にか僕の心に巣食っていた。
これが、“第二の過ち”だ。
この二つの過ちが別々にではなく、二重に重なってしまったことにより、いわば僕は完全なる“恋は盲目”の体現者になってしまっていたというわけだ。
まるで連想ゲームのように、暗闇の中手探りで掴んだ紐を辿っていく。
そういえば、未羅が僕と距離を取り始めたのはあの花火大会からだ。
それまでは順調だったし、よく満面の笑顔で、普通の女の子のように無邪気に笑っていた。
・・・え、ちょっと待った。
普通の女の子のように・・?
紐を辿ると、どんどん視界が広がっていく。
普通の女の子には、“普通の女の子のように”という副詞はつけない。
じゃあ、未羅は僕にとって普通の女の子ではなかったのだろうか。
もう少し分かり易く言うと、初めから未羅は僕の中の“普通の女の子”像に当てはまっていなかったのだろうか・・・。
紐の先の視界が広がり切ったとき、僕はカフェを飛び出していた。
カフェの中は静かで分からなかったが、雪は思いのほか強くなっていて、電車は既に止まり、駅は人でごった返していた。
しかし、どうしようか迷っている時間はなかった。
電車に乗れないと分かったら、僕はロータリーまで走り、空車のタクシーに飛び乗った。
「お客さん、行先は?」
運転手の声で我に返り、財布を開ける。
所持金は五千円しかなかった。
「・・五千円で、〇〇高校方面に進めるだけ進んでください。」
運転手がナビで検索すると、
「ずいぶん遠いね。
5千円だと7割くらいまでしか行けないよ。
いいのかい?」
と心配するように聞いてきた。
そんなことわかっている。
電車と車では訳が違うことくらい。
でも、他に選択肢なんてなかった。
「いいんです!・・お願いします!」
湧き上がってくる後悔が声に滲み出ていた。
それを聞いた運転手は、
「・・わかった。」
とだけ言い、車を走らせた。
◆◇◆◇
なぜ今まで気づかなかったのだろう。
いや、なぜ気付いていたのに問題視しなかったのだろう。
そう、心で感じたことは、目で見た情報よりずっと確かだったのだ。
僕はタクシーの中で、一人後悔をしていた。
そうだ。
未羅は最初から“普通の女の子”なんかじゃなかった。
ずっと違和感を抱いていた。
そもそも僕からしたら、出会い方ですら全然普通じゃなかったじゃないか。
夢で聞いた声の持ち主と、夢を見た次の日に出会うなんて出来事を偶然で済ませるべきではなかった。
まさかこんな自分に“特別な何か”なんて起きるわけがない。
そもそも、そんな超自然的な事信じられない。
そうやって最初から自分に思い込ませてしまったことが、最初にして最大のミスだった。
その時に、特別なことだと自覚すべきだった。
これを、“第一の過ち”としよう。
それに、初めて話した時も未羅は僕の机の前に立っていたし、友達になってからは僕に何かを訴えかけるようなメッセージが込められた言動を目の当たりにすることもあった。
まるで、前から僕のことを知っていて、僕にそれを思い出させようとしているような。
僕は未羅に関係する重要なことを忘れてしまっているのではないか。
もしかしたら、僕たちは知り合う前から知り合いだったのではないだろうか。
あまりに不明瞭で非科学的だが、この際そんな常識は一度捨てるべきだろう。
まあそれはさておき、その言動は何かしら重要な意味を持っているに違いない。
もちろんそのことについて何も思わなかったわけじゃない。
それらの言動に対する違和感は常日頃から感じていた。
しかし、“第一の過ち”のせいで、僕の心はすでに深く考えることを放棄していた。
それに加えて、未羅と僕が秘密の共有者になってから今日に至るまでは、今の幸せがこのまま続くならそれでいいだろう、という“甘え”がいつの間にか僕の心に巣食っていた。
これが、“第二の過ち”だ。
この二つの過ちが別々にではなく、二重に重なってしまったことにより、いわば僕は完全なる“恋は盲目”の体現者になってしまっていたというわけだ。