さて、十二月二十五日、クリスマスの総評から言おう。
 ・・まあ、色々言いたいことはあるが、まずこれだけは言っておかなければいけない。
 クリスマスの総評。
 それは、“僕は大馬鹿だ”である。
 この文から馬鹿さ加減は十分伝わるだろうが、そこは勘弁してほしい。
 十点満点なら二点が妥当だ。
 その二点についてはまた後で説明するとして、まずこう評価するに至った理由についてだが、それについては“日々の愚かさ”の積み重ねという他ないだろう。
 “気付いていたのに”、“気になってはいたのに”、“知りたいと思っていたのに”、“解決しなければ先には進めないと分かっていたのに”。
 これらに続く文として適切なもの。
 それは、“先延ばしにしていた。”である。
 もちろん未羅のことだ。
 いままでの言動にあれほどヒントを残してくれていたのに、ギリギリまで正解にたどり着けなかった。
 つくづく人の心は恐ろしいと思う。
 普段どれだけ勘が鋭い人でも、心のどこかで知りたくないと思ってしまうと、無意識のうちに気付かないようシャッターを下ろしてしまう。
 僕の場合、
「まだ。まだまだ。・・・いや、まだ早い。」
というような具合で頑なにシャッターを開けようとしなかったせいでこうなったとも言える。
 まあ結局、最後の最後でこじ開ける事が出来たから、まだ不幸中の幸いと言えるだろう。
 二点はその分だ。
 よし、ここまでが前置きだ。
 長ったらしく語ってしまったが、ここから本題に入ろうと思う。
 できるだけ、事細かく話そう。
 僕が本来の待ち合わせ場所に着いた場面から。
 そして僕たちがクリスマスの日に、どのような経緯を辿って、どんな結末、いや、運命を迎えたのかを。
◆◇◆◇
 実に清々しい一日のオープニングを迎えた僕は、そのままの勢いで集合場所に一時間も早く着いていた。
 電車自体は遅延していたのだが、ちょうど僕が駅に着いたタイミングで四十五分前発の電車が到着した。
 その結果、朝から首都圏のニュースで話題になっていた記録的な交通網麻痺は僕の計画を全く麻痺させなかった。
 世界が自分の為に動いているような感覚だった。
 昼時だというのにもかかわらず、電車の中は通勤ラッシュ時のようにスーツを着た大人たちで溢れており、その空間にいる僕以外は皆、遅延情報を調べるため小さな画面に釘付けになっていた。
 焦っている人もいれば、あきらめている人やウトウトしている人なども居て実に様々だったが、幸せに満ち溢れた顔をしているのは僕だけだったと思う。
 こういう時は案外何も調べない方が良い方に転んだりするのさ、なんてことを考えながら、車窓から流れる白銀の世界を眺めていたら、あっという間に集合場所の駅についてしまった。
 通ることはあってもその駅で降りたことはなかったので、駅到着のアナウンスが入ると、新たなRPGゲームを始めるような感覚があり、軽々とした足取りで昼時の満員電車を後にした。
 ホームの階段を下ると駅内は想像の二倍は広々としていた。
 加えて、最近改装をしたらしくとても清潔感があった。
早く着きすぎて手持ち無沙汰になってしまった僕は、思い付きでその駅内を探検してみることにした。