やっと言えた。
今まで冬野と話が出来ないことを言い訳にして、自分の気持ちを伝えることから逃げていたが、やっと変われた気がする。
思えば、冬野を好きになってからここまでずいぶん長かった。
というか、長く感じた。
どんな答えが返ってくるかは別として、ようやく自分の中で区切りがついて、小さな達成感を感じた。
そしてそれを聞いた冬野は膝から崩れ落ち地面に座り込んだ。
「もう・・空人君には嘘つけない。
・・・好き。・・・大好き。
大好きなの!
・・・大好きで仕方ないのっ。
ずっとずっと始まる前から愛おしくてたまらなかったの・・」
長い間溜め込んでいた様々な感情を放出するように冬野は言った。
あぁ、よかった。
・・・本当によかった。
ついに聞けた冬野の本音に僕も涙を止めることは出来なくなっていた。
「これで、やっと前に進めるね」
地面に座り込み立てなくなっている冬野に手を差し伸べると、冬野は
「私・・・空人君のこと幸せに出来るか分からないよ?
もしかしたら・・・もしかしたら、すごく不幸にしちゃうかもしれないよ?
もしかしたら、私と付き合わなければよかったって思う日がくるかもしれないよ?
本当にっ・・・本当にそれでもいいの?私、それでも空人君の隣に居ていいの?」
と僕の腕に縋る様にして、言葉を詰まらせながら言った。
「居てくれなきゃ、そもそも僕は不幸なままだ。
一人の不幸より二人の不幸の方がよっぽど幸せだよ。
だから、僕からお願いする。
飽きるまででいいから、これから隣にいてほしい。
ねっ?お願いだ」
そう笑いかけると、冬野は泣いた。
まるで、人目を気にしない子供のように泣き喚いた。
冬野が泣き止み、落ち着くまで僕たちは寄り添いながら、二人で地面に座り込んでいた。
きっと冬野はまだ僕に隠していることがある。
それがあるからこそ自分の気持ちをここまで抑え付けなければならなかったのだろう。
ここまで冬野を追い込み、無理をさせていた原因から、何があっても冬野を守り抜こう。
泣きながら震える小さくて華奢な冬野の肩から、僕の肩を通して伝わってくる冬野の今までの葛藤を受け止めながら、僕はそう胸に誓った。
◆◇◆◇
冬野が落ち着きを取り戻し、学校を後にする頃には、既に時計は九時を回っていた。
すっかり遅くなってしまったので僕は冬野を家まで送ることにした。
歩きながらしっかりと繋がれた手を見ると、恋人同士になったという実感が湧いてきて照れくさくなる。
「ふふっ・・・空人君手汗すごい」
そういう冬野も照れくさそうだ。
「ご、ごめん!こういうの全然慣れてないから・・・」
「うん、知ってる」
ちょっと下を向き、嬉しそうに微笑みながら冬野は言った。
情けない話だが、手をつないだのは冬野からだった。
こんな序盤からいきなりリードされてしまうと男としての自信を無くしてしまいそうだ。
いや、そもそも“男としての”とか考えて意気込んでいる時点で空回りしているような気がする。
そういえば冬野の手のつなぎ方、とても自然で慣れている感じがした。
そうやって考えると、この学校に来る以前の冬野のことを僕は何も知らないんだと改めて思い知らされる。
冬野の本心が知りたい、という目標がひとまず達成されると、すぐに他の事が気になりだしてしまう。
一つのことが終わるとまた別のこと。
そしてそれが解決すればまた新しいこと。
きっと誰かを好きになるということと、そういった“欲”と呼べるようなこの感情はセットなのだろう。
人を好きになるどころか興味すら抱いたことがなかった僕からしたら、新鮮で不思議に感じられると同時に、心の休まりがなく慌ただしくも感じられた。
「なあ、冬野―――」
「ねえ。せっかく恋人同士になったんだから苗字で呼ぶのは終わりにしない?」
冬野は僕が名前を呼ぶのを待ってたと言わんばかりの勢いで僕の言葉を遮った。
「うっ・・・」
まいったな、と思いつつ冬野の顔に目をやると、すごい期待を込めた目でこちらを見つめていた。
「み、未羅・・・」
恥ずかしさのあまり投げやりのような言い方になってしまった。
しかし冬野、いや未羅は満足した様子で人差し指をピンと立て
「よろしいっ!」
と言った。
まったく、きっと冬野・・いや、未羅にはいつまで経っても敵わないな。
今まで冬野と話が出来ないことを言い訳にして、自分の気持ちを伝えることから逃げていたが、やっと変われた気がする。
思えば、冬野を好きになってからここまでずいぶん長かった。
というか、長く感じた。
どんな答えが返ってくるかは別として、ようやく自分の中で区切りがついて、小さな達成感を感じた。
そしてそれを聞いた冬野は膝から崩れ落ち地面に座り込んだ。
「もう・・空人君には嘘つけない。
・・・好き。・・・大好き。
大好きなの!
・・・大好きで仕方ないのっ。
ずっとずっと始まる前から愛おしくてたまらなかったの・・」
長い間溜め込んでいた様々な感情を放出するように冬野は言った。
あぁ、よかった。
・・・本当によかった。
ついに聞けた冬野の本音に僕も涙を止めることは出来なくなっていた。
「これで、やっと前に進めるね」
地面に座り込み立てなくなっている冬野に手を差し伸べると、冬野は
「私・・・空人君のこと幸せに出来るか分からないよ?
もしかしたら・・・もしかしたら、すごく不幸にしちゃうかもしれないよ?
もしかしたら、私と付き合わなければよかったって思う日がくるかもしれないよ?
本当にっ・・・本当にそれでもいいの?私、それでも空人君の隣に居ていいの?」
と僕の腕に縋る様にして、言葉を詰まらせながら言った。
「居てくれなきゃ、そもそも僕は不幸なままだ。
一人の不幸より二人の不幸の方がよっぽど幸せだよ。
だから、僕からお願いする。
飽きるまででいいから、これから隣にいてほしい。
ねっ?お願いだ」
そう笑いかけると、冬野は泣いた。
まるで、人目を気にしない子供のように泣き喚いた。
冬野が泣き止み、落ち着くまで僕たちは寄り添いながら、二人で地面に座り込んでいた。
きっと冬野はまだ僕に隠していることがある。
それがあるからこそ自分の気持ちをここまで抑え付けなければならなかったのだろう。
ここまで冬野を追い込み、無理をさせていた原因から、何があっても冬野を守り抜こう。
泣きながら震える小さくて華奢な冬野の肩から、僕の肩を通して伝わってくる冬野の今までの葛藤を受け止めながら、僕はそう胸に誓った。
◆◇◆◇
冬野が落ち着きを取り戻し、学校を後にする頃には、既に時計は九時を回っていた。
すっかり遅くなってしまったので僕は冬野を家まで送ることにした。
歩きながらしっかりと繋がれた手を見ると、恋人同士になったという実感が湧いてきて照れくさくなる。
「ふふっ・・・空人君手汗すごい」
そういう冬野も照れくさそうだ。
「ご、ごめん!こういうの全然慣れてないから・・・」
「うん、知ってる」
ちょっと下を向き、嬉しそうに微笑みながら冬野は言った。
情けない話だが、手をつないだのは冬野からだった。
こんな序盤からいきなりリードされてしまうと男としての自信を無くしてしまいそうだ。
いや、そもそも“男としての”とか考えて意気込んでいる時点で空回りしているような気がする。
そういえば冬野の手のつなぎ方、とても自然で慣れている感じがした。
そうやって考えると、この学校に来る以前の冬野のことを僕は何も知らないんだと改めて思い知らされる。
冬野の本心が知りたい、という目標がひとまず達成されると、すぐに他の事が気になりだしてしまう。
一つのことが終わるとまた別のこと。
そしてそれが解決すればまた新しいこと。
きっと誰かを好きになるということと、そういった“欲”と呼べるようなこの感情はセットなのだろう。
人を好きになるどころか興味すら抱いたことがなかった僕からしたら、新鮮で不思議に感じられると同時に、心の休まりがなく慌ただしくも感じられた。
「なあ、冬野―――」
「ねえ。せっかく恋人同士になったんだから苗字で呼ぶのは終わりにしない?」
冬野は僕が名前を呼ぶのを待ってたと言わんばかりの勢いで僕の言葉を遮った。
「うっ・・・」
まいったな、と思いつつ冬野の顔に目をやると、すごい期待を込めた目でこちらを見つめていた。
「み、未羅・・・」
恥ずかしさのあまり投げやりのような言い方になってしまった。
しかし冬野、いや未羅は満足した様子で人差し指をピンと立て
「よろしいっ!」
と言った。
まったく、きっと冬野・・いや、未羅にはいつまで経っても敵わないな。