「・・正直な話、冬野がさっき『僕らの“関係”がバレた』って言った時、少し嬉しかったんだ。
だってそれって、冬野も僕のこと少なからず特別視してるってことでしょ?」
「・・・やめて」
沈黙を貫いていた冬野は、俯いたままつぶやいた。
「僕は誰かを好きになったことなんてないからよく分からないけど、こういう時って相手の考えてることが分からないとすごく不安になるんだね。
“もしかしたら僕だけが”とか思うと、いてもたってもいられなくなるし、分からないことだらけで疲れるよ。本当に」
「・・・お願い。やめて」
さっきよりも少し口調が強くなった。
「今までなら他人に興味なんて抱かなかったし、自分が傷つくかもしれないことは避けながら生きてきた。
いつか、きっといつか変わればいいんだ、なんて呑気に思いながら一日一日を無駄にしていたんだよ。
・・・でもそれでも知りたいと思えるってことは、きっと僕は君に会ってから変わったんだと思う。
今までただ時間が過ぎるのを待つだけだった毎日が、今じゃむしろ時間が足りないと感じるほどに冬野と過ごすのが楽しい」
「・・・もぉ、嫌」
声は、力なく震えていた。
「・・・わかった。
冬野が嫌なら、僕から言うよ。
冬野は返事だけしてくれればいい。
簡単でしょ?
だから、ちゃんと聞いてほしい」
一度、大きく深呼吸をした。
「冬野。
僕は冬野のことが、す―――――」
「それ以上言っちゃダメ!!」
激しく放たれた冬野の一言は暗くなった廊下の奥まで響き渡り、立ち上がった勢いで机はガタッと音を立て、中から教科書などが飛び出した。
「それ以上、言っちゃだめだよ。
私は、空人君の気持ちに応えられないから」
尻すぼみしていく声でそう言った冬野の肩は小刻みに震えている。
応えられない。
出来る出来ないの回答を僕は望んでいなかった。
「またそうやってブレーキを掛けるの?」
それを聞いた冬野は心当たりがあるかのように押し黙った。
「いつも肝心なところでブレーキを掛けるよね。
最近分かったんだ。
屋上で話したあの日、僕は冬野に対する自分の気持ちに気付いた。
・・・ごまかしきれなくなったって言う方が正しいか。
その時、冬野は僕の気持ちに気づいて戸惑ってたよね?
あの時は冬野の様子を見て、ただそれだけで断られてしまったと自分で決め付けたんだ」
「そう、そうだよ。
断ったの。だから―――」
「ううん。そうじゃない。
今は僕の話を聞いて?」
遮ろうとする冬野を諭した。
「でもさ、それじゃ説明がつかないことが多すぎるんだ。
君も僕との時間を楽しんでいた。
それは間違いないよね?」
「それは・・・うん。楽しかった」
さっきから薄々気付いていたことに今確信した。
冬野は取り繕えても嘘はつけないようだった。
「君が単に僕の気持ちに応えられないだけだとしたら、なんでいつもいつも苦しそうな顔をするの?
なんでそうやって助けを求めるみたいに、僕にその顔を見せるの?
初めて会った時や、記憶や夢の話をした時もそう。
僕に何かを伝えたいのに寸前でそれをいつも押し殺してるような顔を僕は何度も見てきた」
「違う!違うの!私は―――」
「冬野は嘘をつくのが下手だ。
ねえ、今回だけは冬野の本当の気持ちを聞かせてほしい。
ちょっと強引すぎるのは分かってる。
でも、もうずっとモヤモヤしたままなのは嫌なんだ」
だってそれって、冬野も僕のこと少なからず特別視してるってことでしょ?」
「・・・やめて」
沈黙を貫いていた冬野は、俯いたままつぶやいた。
「僕は誰かを好きになったことなんてないからよく分からないけど、こういう時って相手の考えてることが分からないとすごく不安になるんだね。
“もしかしたら僕だけが”とか思うと、いてもたってもいられなくなるし、分からないことだらけで疲れるよ。本当に」
「・・・お願い。やめて」
さっきよりも少し口調が強くなった。
「今までなら他人に興味なんて抱かなかったし、自分が傷つくかもしれないことは避けながら生きてきた。
いつか、きっといつか変わればいいんだ、なんて呑気に思いながら一日一日を無駄にしていたんだよ。
・・・でもそれでも知りたいと思えるってことは、きっと僕は君に会ってから変わったんだと思う。
今までただ時間が過ぎるのを待つだけだった毎日が、今じゃむしろ時間が足りないと感じるほどに冬野と過ごすのが楽しい」
「・・・もぉ、嫌」
声は、力なく震えていた。
「・・・わかった。
冬野が嫌なら、僕から言うよ。
冬野は返事だけしてくれればいい。
簡単でしょ?
だから、ちゃんと聞いてほしい」
一度、大きく深呼吸をした。
「冬野。
僕は冬野のことが、す―――――」
「それ以上言っちゃダメ!!」
激しく放たれた冬野の一言は暗くなった廊下の奥まで響き渡り、立ち上がった勢いで机はガタッと音を立て、中から教科書などが飛び出した。
「それ以上、言っちゃだめだよ。
私は、空人君の気持ちに応えられないから」
尻すぼみしていく声でそう言った冬野の肩は小刻みに震えている。
応えられない。
出来る出来ないの回答を僕は望んでいなかった。
「またそうやってブレーキを掛けるの?」
それを聞いた冬野は心当たりがあるかのように押し黙った。
「いつも肝心なところでブレーキを掛けるよね。
最近分かったんだ。
屋上で話したあの日、僕は冬野に対する自分の気持ちに気付いた。
・・・ごまかしきれなくなったって言う方が正しいか。
その時、冬野は僕の気持ちに気づいて戸惑ってたよね?
あの時は冬野の様子を見て、ただそれだけで断られてしまったと自分で決め付けたんだ」
「そう、そうだよ。
断ったの。だから―――」
「ううん。そうじゃない。
今は僕の話を聞いて?」
遮ろうとする冬野を諭した。
「でもさ、それじゃ説明がつかないことが多すぎるんだ。
君も僕との時間を楽しんでいた。
それは間違いないよね?」
「それは・・・うん。楽しかった」
さっきから薄々気付いていたことに今確信した。
冬野は取り繕えても嘘はつけないようだった。
「君が単に僕の気持ちに応えられないだけだとしたら、なんでいつもいつも苦しそうな顔をするの?
なんでそうやって助けを求めるみたいに、僕にその顔を見せるの?
初めて会った時や、記憶や夢の話をした時もそう。
僕に何かを伝えたいのに寸前でそれをいつも押し殺してるような顔を僕は何度も見てきた」
「違う!違うの!私は―――」
「冬野は嘘をつくのが下手だ。
ねえ、今回だけは冬野の本当の気持ちを聞かせてほしい。
ちょっと強引すぎるのは分かってる。
でも、もうずっとモヤモヤしたままなのは嫌なんだ」