その日の夜は、真っ先にやるべきことを済ませて自分の部屋に向かい、ベッドの上で仰向けになった。
 色々なことが今日一日に詰まっていた。冬野のことが好きだと自覚してしまったこと。
 おそらくそれが相手に伝わり、拒絶に近い反応を示されてしまったこと。
 夢で聞いたあの言葉をついに冬野が口にしたこと。
 やはり壱の言う予知夢というのは本当だったということなのだろうか。
 だとしたら、僕と冬野の関係に何か進展があるということの前触れなのだろうか。
 しかし、それでは辻褄が合わないことがある。
 今日の冬野はおかしかった。
 途中までは明らかに僕の好意を拒否していたのに、その後時間が経つと、まるでそんなことなど無かったかのように、僕に特別な好意を抱いているかのような発言をした。
 押せば引かれ、引けば押され、全く手ごたえがなかった。
 まるで冬野の中に全く別の感情が二つ存在しているかのような、そんな違和感があった。
 そしてその二つの感情は、どちらかが振り切ってしまうことが無いようお互いに制御し合っているように思える。
 自分はどうするべきだったのか。
 そして、彼女の真意はなんなのか。
 今はそのことしか考えられそうになかった。
 しかし、彼女のことを好きになってしまった以上、ここではっきりさせないと前に進む事が出来ない。
 これから先どんなことが待っていても彼女への気持ちが変わることはない。
 好きになったばかりでなぜそんなことわかるのか、と聞かれればうまく答えられないが、何故かその自信だけはあった。
 もう一度、もう一度でいいから、二人で話す時間が欲しい。
 なるべく近いうちに。
 できれば今週末だ。
 この彼女に対する気持ちが積極的になってる間に、アクションを起こす必要があったのだ。
 でも、いつまでも冬野からの誘いを待っているだけじゃそれは叶わないだろう。
 そうなればいっそ自分から誘ってしまおう。
 そう決心したら、いてもたってもいられなくなり、携帯を手に取った。
『あのさ、今度休みの日に出かけない?二人で』