二〇二二年十一月二日。

「おーい、未羅ちゃーん!早く書店行かねーとー!
いつまで空人と話してるんだー!」

 その声と同時に線香の香りが終わった。

「・・・じゃあ、行ってくるね。
空人君、今日は私たちの本の発売日だよ。
どうしても空人君には先に読んでほしかったから、発売前に一冊だけ置いていくね?」

「おーい、書店の開店まであと二十分ねーぞ!
発売前からあんなに注目されてんだから、並ばないと買えないかもしれないだろ?」

「もー、分かったってば。
てゆーか、私は著者だからもう持ってるし。
壱也君が欲しいだけでしょ?」

「あったりめーだろ。
俺の親友たちの門出なんだから、何が何でも手に入れる。」

「売り切れちゃったら、一冊あげるよ?」

「ばーか、俺はファンとして“購入”したいんだよ。」

「そっか、嬉しいねぇ」

「・・・空人には渡してきたのか?」

「・・・うん。もちろん」

「そっか。きっとあいつも喜んでるよ」

「だといいねぇ」

「そろそろ行こうぜ」

「うん、そうだね。
・・また来るよ、空人君」


『正解は君のために』