「えっと、それは月餅です」
月餅は宮中で、よく食べられる。
中には小豆がたっぷりと、入っており、甘くしっとりとした生地が非常美味(ヒェイチョンメイウェイ)
そんなに珍しいものかな、と詩希は思う。
「覚えておこう。………賀堅(ハーチェン)
暁飛は、こくりと頷く。
そして総官太監であり、暁飛の側近でもある賀堅を呼ぶ。
「はい、主上様」
「…なぜ、味?がするのだ。なんか匂う…これが風味というやつか?」
丸で、離乳食を卒業して、普通食を初めて食べた幼子ではないか!と詩希は心の中でつっこむ。
だが、そんな詩希とは反して、息を飲んだようにして驚愕する賀堅。
「陛下…龍の印をはご健在で…!?」
味覚を感じるならば、皇帝の印が消えているのではないかと思ったのか、途端、失礼しますと言って、賀堅は暁飛を上半身、裸にした。
その上半身は、彫刻のように磨き上がった筋肉。
詩希は、たちまち赤面する。
目のやり場に困る、と思い直視できない。
そんな思いも知らず、陛下は興奮する。
味がするぞ────と。
そんな暁飛の背中には、濃く龍の印が刻まれていた。



これは、味覚を感じない皇帝と、訳アリ男装少女が紡ぐ幸せ満腹の物語────。