「……」
「あ、今日は黄緑のピラミッドみたいなバスボム」
 翌日、また私と藍染の靴箱にはバスボムが入れてあった。私のは、今日は雪玉みたいにまん丸で真っ白い。ていうか、これまさか毎日つづくんじゃ……。
「おはよう!」
 憂鬱に思いつつも、バスボムを鞄に仕舞っていると、まるで待ち伏せていたかのようなタイミングで円城寺さんがやってきた。
「今日のバスボムは、白瀬さんのがシャボンの香りで、藍染くんのがメロンの香りだよ!」
「え、メロンすき」
 藍染がそう言った。
「……あの、何でバスボムなんですか? 普通は好きな人の靴箱に入れるものって、お菓子とか……ラブレターとかじゃないんですか?」
 私は気になっていた点を尋ねてみた。円城寺さんはちょっと困った顔で笑って答えた。
「お菓子だと、カロリーが気になるだろうし、手紙だって置く場所や保管に地味に困るし、キモいとか思われて捨てられたらさすがにちょっとショックだし……」
 この人にもショックとかいう感情あるんだ。感心。
「でもほら、その点、バスボムなら化学室にある材料で簡単につくれるし、お湯に溶かせば消えるし、入浴時にリラックス効果とか美肌効果もあるし良いことしかないじゃないか! あと、見た目的にも可愛くておしゃれ!」
「一応、いろいろ考えてのバスボムだったんですね……」
「お? 印象アップした? 三人でつき合ってくれる気になった?」
「いや……なりませんよ」
 ため息まじりに言葉を返す。この人は全く諦めていないようだ。「それは残念だなぁ」と彼はシュンと肩を落とした。けど、またすぐに私に尋ねてきた。
「そうだ! 白瀬さん、昨日あげたバスボムは使ってみた?」
「え? いや、使ってないですけど……」
「俺つかったー」
「つかったの!?」
 藍染がしれっと言ったので驚いて二度見してしまった。
「うん。なんかね、湯船に溶かしたらすごいいい匂いだったし、家族にも好評だった」
 円城寺さんを見ると、彼はニコッと笑いかけてきた。
 こいつ、本気だ……。ふざけてるように見えてかなり本気。
「ていうか、サラッと私と藍染のことが好きだって昨日言ってましたけど……円城寺さんってその、同性もすきになれるタイプの人なんですか……?」
「え、わかんないなぁ。それは。今まで男の子を好きになったことはないから。でも藍染くんのことは好きだと思うよ。もちろん白瀬さんのこともかわいいと思う」
 うきうきと楽しそうに言われて、もうどうしたらいいかがわからなくなる。