朝、靴箱を開けたら、可愛い石鹸が入っていた。淡い水色をしている、星形の石鹸。透明な袋に入れられていて、袋の口はモールで縛られていた。
私は上履きを取ろうとしていた手を思わず引いた。
……何これ?
周りの人が靴を履き替えてそれぞれの教室へと向かっていく中、私は自分の靴箱の前から一歩も動けずに固まる。
「あっ、バスボム」
ふいに肩口を誰かが覗き込んできて言った。
振り向くと、そこには見慣れた顔があった。
「藍染! 寝坊したから遅れてくるんじゃなかったの? 早いじゃん」
今朝、LIMEで送られてきた「ごめん星紗ちゃん。寝坊したから先に学校いってて」という文面を思い出して言う。
「親の車で送ってもらった……。めっちゃ焦った」
後頭部を片手で掻いて、藍染はまだ寝足りなさそうにあくびをした。そんな仕草ですらどこか愛おしく見えるのは、藍染が私の彼氏だからだと思う。
「てか、バスボムってなに?」
私は石鹸だと思った水色のバスボムとやらを指差して尋ねる。自然と眉間にシワが寄った。
「え、バスボムはあの、固形の入浴剤。お風呂に溶かして、色と香りを楽しむやつ。誰かからのプレゼントじゃない? 差出人の名前とか書いてないの?」
「……ないね」
バスボム一つだけが入った袋を持ち上げて、色んな角度から眺めてみた。けれど、どこにも名前は書かれていない。
「まあ、でも可愛いのもらえてよかったじゃん」
「よかったのかな……。私、こんなのもらうようなことした覚えないんだけど」
「まあまあ、もらえるものはもらっとけって言」
のんきな口ぶりで言った藍染が、私の隣で靴箱を開ける。そして、ほぼ同時に藍染の声が途切れた。
「え、なにどうしたの?」
「俺のとこにも入ってた……」
藍染は透明な袋に入れられた、イエローの星型のバスボムを取り出してみせた。
私は上履きを取ろうとしていた手を思わず引いた。
……何これ?
周りの人が靴を履き替えてそれぞれの教室へと向かっていく中、私は自分の靴箱の前から一歩も動けずに固まる。
「あっ、バスボム」
ふいに肩口を誰かが覗き込んできて言った。
振り向くと、そこには見慣れた顔があった。
「藍染! 寝坊したから遅れてくるんじゃなかったの? 早いじゃん」
今朝、LIMEで送られてきた「ごめん星紗ちゃん。寝坊したから先に学校いってて」という文面を思い出して言う。
「親の車で送ってもらった……。めっちゃ焦った」
後頭部を片手で掻いて、藍染はまだ寝足りなさそうにあくびをした。そんな仕草ですらどこか愛おしく見えるのは、藍染が私の彼氏だからだと思う。
「てか、バスボムってなに?」
私は石鹸だと思った水色のバスボムとやらを指差して尋ねる。自然と眉間にシワが寄った。
「え、バスボムはあの、固形の入浴剤。お風呂に溶かして、色と香りを楽しむやつ。誰かからのプレゼントじゃない? 差出人の名前とか書いてないの?」
「……ないね」
バスボム一つだけが入った袋を持ち上げて、色んな角度から眺めてみた。けれど、どこにも名前は書かれていない。
「まあ、でも可愛いのもらえてよかったじゃん」
「よかったのかな……。私、こんなのもらうようなことした覚えないんだけど」
「まあまあ、もらえるものはもらっとけって言」
のんきな口ぶりで言った藍染が、私の隣で靴箱を開ける。そして、ほぼ同時に藍染の声が途切れた。
「え、なにどうしたの?」
「俺のとこにも入ってた……」
藍染は透明な袋に入れられた、イエローの星型のバスボムを取り出してみせた。