「さて、行きましょうか!」
眩い笑顔で行こうと言うステラ。
突然脈絡もなく行こうと言われても困る。一体どこに行こうというのだろうか。
「どこに行くの?」
「決まっているじゃないニクスよ」
ニクスとはどこだろうか。
町の名前なのか、都市の名前なのかピンとこない。リラと何やら話し始めたが内容すべてが理解できないので、ただ聞いていることにした。
「ここは国境の端だから、とりあえずニクスを目指して行くのがいいと思うわ」
「そうですね。ステラ様の言う通り行くのが一番ですね」
どうやらニクスという場所に行く段取りをしているようだ。
話しの流れからするとかなり遠い場所にあるように思えるが、辿り着くことができるのだろうか。
「ノア君はどう思う? ニクスに行くにはどうすればいいかな?」
話しを振られてもニクスの位置が分からないので答えようがない。
とりあえず嘘をつかずに分からないことを言った方がいいだろうと思い、素直に言うことにする。
「さっきから話題に出てるニクスってどこにあるの?」
「え!? ノア君ニクス知らないの?」
「聞いたことないな。どこかの小さな村とか?」
ノアの言葉を聞いて目を丸くしてしまう二人。
何か変なことを言ったのかと不安になるが、小さく微笑をしながらステラが首都の名前だと教えてくれた。
「首都の名前だったのか。聞いたことなかったよ」
「結構常識だよ?」
「まともな教育を受けてないからな。戦うことや、最低限のことをおやっさんに教わったくらいだぞ」
ヘリスはノアの言葉を聞いて、もっと教えていればとボヤいているようだ。
確かに戦闘以外のことは殆ど教わっていないが、それでも助かったことは事実だ。そこまで落ち込んでほしくないが、教養という面では何も言えない。
「ステラ様すまねえ。俺がもう少し教養を教えていればよかったな」
「いえ、ずっと戦ってくれていたのですから仕方ないです。これから知ればいいですし、遅いなんてことはないですよ」
「ステラ様が優しいお人で良かったなノア」
「そうだな、命に代えても守り通すよ」
「その意気だ。何かに躓いたら一度止まって考えるんだぞ」
「分かった。おやっさんに教わったことを活かしていくよ」
微笑しているステラが可愛い。
話しに聞く王族とは違う行動に終始唖然とさせられるが、これがステラ・オーレリアなのだろうと思うことにしている。いつか本性を出される恐れもあるが、ここまで人を騙す演技は難しいはずだ。演技ではないと思いたい。
「さて、ニクスを目指して行きましょうか」
「そうですね。馬も何もないこの状況じゃ歩くしかないですが、それでも進むことには変わりがありませんからね」
リルが言う通り、馬などの移動手段はない。
歩くしかない状況だが、それでも進めばいずれ目的地にた辿り着くだろう。そこで何が起きるか分からないが、国を変える戦いが待ち受けているのは間違いない。
「まずはどこに行くんだ?」
「そうね……近い場所にあるアシェラ村とかどうかな? あそこならある程度の情報が首都から来ているだろうしね」
「良い考えです。少しずつ村や都市を巡って行きましょう」
ある程度固まったところで、ステラがノアの手を触ってきた。
いきなりで焦るが、どうやら一緒に行こうという合図らしい。
「一緒に行こう。これから新しい日々が始まるよ」
「そうだな。楽しみと不安があるけど、乗り越えて目的を果たすよ」
「その意気だよ! 三人で頑張ろう!」
眩い笑顔に癒される。
ステラはその笑顔で人々を笑顔にし、癒す力があるのだろう。魔法とまではいかないが、神秘的な力を感じる。
「ヘリスさんありがとうございました。お話しができて嬉しかったです」
「いいさ。ノアをよろしく頼むぞ」
「はい!」
「そうだ。ノア、これをやろう」
そう言いながらヘリスは腰に差していた剣をノアに手渡してくる。
純白の刀身と黒色の柄が相反する配色で美しい。本当にもらっていいのだろうか。ヘリスが持つ英雄の剣は荷が重すぎる気がするとノアは考えていた。
「おやっさんの剣は俺には荷が重いよ。だって、英雄の剣だろ?」
「そんなの関係ない、俺の剣を使ってほしいんだ。大罪人になる時に、特例で持つことを許された唯一の私物だ。未来を作るお前に使ってほしいんだよ」
「本当に俺が使っていいのか?」
「いいんだ。お前に使ってほしいんだよ」
ただただ嬉しい。
これまで良いことが起きてこなかったが、まさか村を出る寸前で起こるとは思わなかった。しかもそれがお世話になていたヘリスならなおさらだ。
「ありがとう。おやっさんの剣で未来を切り開くよ!」
剣を空に向けると、日の光に照らされて眩く光り輝いている。
眩しいほどに輝く剣を鞘に戻し、ノアはヘリスに一礼をした。
「お前に頭を下げられる日が来るとはな。だが、もういいぞ。その剣を大切にな」
「おう! ありがとう!」
嬉しさのあまり、おもちゃをもらった子供のような眼をしているノアの横腹をステラが肘で小突いてくる。
「はしゃぎすぎよ。ヘリスさんからもらったら私も嬉しいけど、今は早く先を急ぎましょう。時間は待ってはくれないわよ?」
「ごめん、つい嬉しくて。おやっさん、ロゼ行ってくる」
「お兄ちゃん頑張って! 応援してる!」
「死ぬんじゃねえぞ。またここで待ってるからな」
「おう! 行ってきます!」
二人に手を振ってステラ達と共に村を出た。
戦闘の影響未だ残る道を進み、アシェラ村を目指して行く。村に迫っていたテネア国とイルア皇国の兵士を退けたが、どこかに隠れているかもしれないので三人は警戒をしながら道を進んでいる。
「ノア君、残党に気を付けてね」
「分かってる。村を出てすぐ死ぬなんてごめんだからな。そういえば俺を監視してた看守に何も言わなくていいのか?」
気になっていたことをステラに聞くと、リルが気にするなと言ってくる。
「ノアが気にすることはない。今頃ヘリスが上手くやってくれています」
「おやっさんが!? 最後まで頼ってばかりだな……村に戻る時に何かお土産でも買っていくか」
「ふふふ。ノア君らしいですね。私も一緒に行きます」
「姫様!? なら私も一緒に!」
ステラが関わるとリルは面白い反応をする。
からかって反応を楽しもうと考えていると、どこからか風切り音が聞こえてきた。
「敵襲か!?」
「どこからですか!? 村を出てこんなに早くだなんて!」
リルが周囲を見渡すが、迫る人影は見当たらないようだ。
ノアもステラと共に音が聞こえる方を向くも、襲撃者と思われる姿は見えない。一体どこにいるというのか。見えない襲撃者を警戒していると、地面に影が現れたのにノアが気が付いた。
「影……空か!?」
その言葉を発した瞬間、地面に衝撃が走りノアに向けて剣が振るわれた。
「ぐぅぅ! だ、誰だお前は!」
土埃で顔は見えないが、銀色に光る鎧を纏っているのだけは分かる。
線が細い鎧からして女性なのは分かるが、力が強すぎる。男性のノアが力負けをして後方に押されるほどだ。
「くそ! なんだこの力は! あんたはテネア国やイルア皇国の兵士なのか!?」
何度問いかけても一向に返答がない。
ただ答えないのか、それとも喋れないのか。疑問ばかりが浮かぶ襲撃者だ。
歯を食いしばって重い力に耐えていると、次第に土埃が晴れて顔が見えてくる。その顔はどこか懐かしく、心臓が掴まれるかのような衝撃を受けた。
「も、もしかしてルナか? ルナだよな!?」
「――――――」
またしても返答がないが、顔立ちや髪の色が同じだ。肩を超す白銀の髪をなびかせ、紺碧の大きな二つ目が現れた。
五年前の姿しか覚えていないが、確実に成長していれば目の前にいる少女と同じ容姿と年齢になっているはずだ。そもそも妹を見間違えるはずがない。
「ノア君!」
「姫様下がって!」
「でもノア君が!」
近づこうとしたステラをリルが強引に引き止めている。もし止めていなければ呆気なく殺されていただろう。
それほどまでに力強く、脅威的な威圧感を放っている。
眩い笑顔で行こうと言うステラ。
突然脈絡もなく行こうと言われても困る。一体どこに行こうというのだろうか。
「どこに行くの?」
「決まっているじゃないニクスよ」
ニクスとはどこだろうか。
町の名前なのか、都市の名前なのかピンとこない。リラと何やら話し始めたが内容すべてが理解できないので、ただ聞いていることにした。
「ここは国境の端だから、とりあえずニクスを目指して行くのがいいと思うわ」
「そうですね。ステラ様の言う通り行くのが一番ですね」
どうやらニクスという場所に行く段取りをしているようだ。
話しの流れからするとかなり遠い場所にあるように思えるが、辿り着くことができるのだろうか。
「ノア君はどう思う? ニクスに行くにはどうすればいいかな?」
話しを振られてもニクスの位置が分からないので答えようがない。
とりあえず嘘をつかずに分からないことを言った方がいいだろうと思い、素直に言うことにする。
「さっきから話題に出てるニクスってどこにあるの?」
「え!? ノア君ニクス知らないの?」
「聞いたことないな。どこかの小さな村とか?」
ノアの言葉を聞いて目を丸くしてしまう二人。
何か変なことを言ったのかと不安になるが、小さく微笑をしながらステラが首都の名前だと教えてくれた。
「首都の名前だったのか。聞いたことなかったよ」
「結構常識だよ?」
「まともな教育を受けてないからな。戦うことや、最低限のことをおやっさんに教わったくらいだぞ」
ヘリスはノアの言葉を聞いて、もっと教えていればとボヤいているようだ。
確かに戦闘以外のことは殆ど教わっていないが、それでも助かったことは事実だ。そこまで落ち込んでほしくないが、教養という面では何も言えない。
「ステラ様すまねえ。俺がもう少し教養を教えていればよかったな」
「いえ、ずっと戦ってくれていたのですから仕方ないです。これから知ればいいですし、遅いなんてことはないですよ」
「ステラ様が優しいお人で良かったなノア」
「そうだな、命に代えても守り通すよ」
「その意気だ。何かに躓いたら一度止まって考えるんだぞ」
「分かった。おやっさんに教わったことを活かしていくよ」
微笑しているステラが可愛い。
話しに聞く王族とは違う行動に終始唖然とさせられるが、これがステラ・オーレリアなのだろうと思うことにしている。いつか本性を出される恐れもあるが、ここまで人を騙す演技は難しいはずだ。演技ではないと思いたい。
「さて、ニクスを目指して行きましょうか」
「そうですね。馬も何もないこの状況じゃ歩くしかないですが、それでも進むことには変わりがありませんからね」
リルが言う通り、馬などの移動手段はない。
歩くしかない状況だが、それでも進めばいずれ目的地にた辿り着くだろう。そこで何が起きるか分からないが、国を変える戦いが待ち受けているのは間違いない。
「まずはどこに行くんだ?」
「そうね……近い場所にあるアシェラ村とかどうかな? あそこならある程度の情報が首都から来ているだろうしね」
「良い考えです。少しずつ村や都市を巡って行きましょう」
ある程度固まったところで、ステラがノアの手を触ってきた。
いきなりで焦るが、どうやら一緒に行こうという合図らしい。
「一緒に行こう。これから新しい日々が始まるよ」
「そうだな。楽しみと不安があるけど、乗り越えて目的を果たすよ」
「その意気だよ! 三人で頑張ろう!」
眩い笑顔に癒される。
ステラはその笑顔で人々を笑顔にし、癒す力があるのだろう。魔法とまではいかないが、神秘的な力を感じる。
「ヘリスさんありがとうございました。お話しができて嬉しかったです」
「いいさ。ノアをよろしく頼むぞ」
「はい!」
「そうだ。ノア、これをやろう」
そう言いながらヘリスは腰に差していた剣をノアに手渡してくる。
純白の刀身と黒色の柄が相反する配色で美しい。本当にもらっていいのだろうか。ヘリスが持つ英雄の剣は荷が重すぎる気がするとノアは考えていた。
「おやっさんの剣は俺には荷が重いよ。だって、英雄の剣だろ?」
「そんなの関係ない、俺の剣を使ってほしいんだ。大罪人になる時に、特例で持つことを許された唯一の私物だ。未来を作るお前に使ってほしいんだよ」
「本当に俺が使っていいのか?」
「いいんだ。お前に使ってほしいんだよ」
ただただ嬉しい。
これまで良いことが起きてこなかったが、まさか村を出る寸前で起こるとは思わなかった。しかもそれがお世話になていたヘリスならなおさらだ。
「ありがとう。おやっさんの剣で未来を切り開くよ!」
剣を空に向けると、日の光に照らされて眩く光り輝いている。
眩しいほどに輝く剣を鞘に戻し、ノアはヘリスに一礼をした。
「お前に頭を下げられる日が来るとはな。だが、もういいぞ。その剣を大切にな」
「おう! ありがとう!」
嬉しさのあまり、おもちゃをもらった子供のような眼をしているノアの横腹をステラが肘で小突いてくる。
「はしゃぎすぎよ。ヘリスさんからもらったら私も嬉しいけど、今は早く先を急ぎましょう。時間は待ってはくれないわよ?」
「ごめん、つい嬉しくて。おやっさん、ロゼ行ってくる」
「お兄ちゃん頑張って! 応援してる!」
「死ぬんじゃねえぞ。またここで待ってるからな」
「おう! 行ってきます!」
二人に手を振ってステラ達と共に村を出た。
戦闘の影響未だ残る道を進み、アシェラ村を目指して行く。村に迫っていたテネア国とイルア皇国の兵士を退けたが、どこかに隠れているかもしれないので三人は警戒をしながら道を進んでいる。
「ノア君、残党に気を付けてね」
「分かってる。村を出てすぐ死ぬなんてごめんだからな。そういえば俺を監視してた看守に何も言わなくていいのか?」
気になっていたことをステラに聞くと、リルが気にするなと言ってくる。
「ノアが気にすることはない。今頃ヘリスが上手くやってくれています」
「おやっさんが!? 最後まで頼ってばかりだな……村に戻る時に何かお土産でも買っていくか」
「ふふふ。ノア君らしいですね。私も一緒に行きます」
「姫様!? なら私も一緒に!」
ステラが関わるとリルは面白い反応をする。
からかって反応を楽しもうと考えていると、どこからか風切り音が聞こえてきた。
「敵襲か!?」
「どこからですか!? 村を出てこんなに早くだなんて!」
リルが周囲を見渡すが、迫る人影は見当たらないようだ。
ノアもステラと共に音が聞こえる方を向くも、襲撃者と思われる姿は見えない。一体どこにいるというのか。見えない襲撃者を警戒していると、地面に影が現れたのにノアが気が付いた。
「影……空か!?」
その言葉を発した瞬間、地面に衝撃が走りノアに向けて剣が振るわれた。
「ぐぅぅ! だ、誰だお前は!」
土埃で顔は見えないが、銀色に光る鎧を纏っているのだけは分かる。
線が細い鎧からして女性なのは分かるが、力が強すぎる。男性のノアが力負けをして後方に押されるほどだ。
「くそ! なんだこの力は! あんたはテネア国やイルア皇国の兵士なのか!?」
何度問いかけても一向に返答がない。
ただ答えないのか、それとも喋れないのか。疑問ばかりが浮かぶ襲撃者だ。
歯を食いしばって重い力に耐えていると、次第に土埃が晴れて顔が見えてくる。その顔はどこか懐かしく、心臓が掴まれるかのような衝撃を受けた。
「も、もしかしてルナか? ルナだよな!?」
「――――――」
またしても返答がないが、顔立ちや髪の色が同じだ。肩を超す白銀の髪をなびかせ、紺碧の大きな二つ目が現れた。
五年前の姿しか覚えていないが、確実に成長していれば目の前にいる少女と同じ容姿と年齢になっているはずだ。そもそも妹を見間違えるはずがない。
「ノア君!」
「姫様下がって!」
「でもノア君が!」
近づこうとしたステラをリルが強引に引き止めている。もし止めていなければ呆気なく殺されていただろう。
それほどまでに力強く、脅威的な威圧感を放っている。