三年前のあの日、私の父が先帝暗殺を企てたとの罪で、九族皆殺しの刑に処された。

屋敷に火を放たれ、父や母、弟も殺された。

私はなんとか兵の目を盗んで屋敷から逃げ出したのだ。

父が本当に先帝暗殺を企てたとは思っていない。

礼部尚書を務めていた父はおとなしい性格で、先帝に盾突くなんてとてもできないような人だった。

とにかく、逃げた私は一度すべてを諦めようと立ち止まった。

しかし、突如現れた謎の武人が助けてくれたのだ。

見間違えるはずがない。美しい黒髪の、若い武人だった。

まさか、太子だとは思わなかった。だって、太子ならば私を逃がすはずはないから。

どくんどくんと胸が鳴る。

あのときの彼が新帝だったなんて。

「緊張しているようだが、話をしてもいいだろうか」

「あ、は、はい」

皇帝は彼専用の椅子に座った。ひとつひとつの所作が美しい。

見惚れそうになるが、何度も瞬きをし、堪えた。

背筋を伸ばして直立し、手を合わせたまま彼の言葉に耳を傾ける。