乾清宮の奥へ通された私は、ひとりで皇帝を待つことになった。

他の者は近づけるなという命令らしい。

新しい皇帝は、いったいどんな人なのかしら。

女性は後宮にでも入らない限り、皇帝の姿を見ることはない。

高鳴る胸を押さえて待っていると、すっと戸が引かれた。

両手で拳を握り深く腰を折った私に、低い声が降ってきた。

「面を上げよ」

恐る恐る顔を上げた私は声を失った。

皇帝は正式な場で着る冕服や冕冠は着用せず、楽そうな衣を纏っている。

しかし袖口に刺繍された龍が、彼が皇帝だということを示していた。

髪は上の方だけまとめ、下は流している。

「そなたが宇俊か」

「さ、さようでございます」

怪訝そうに見つめられ、私はなんとか返事をした。

私が驚いたのは、若い皇帝が想像の何倍も美しかったからではない。

過去、彼に会ったことがあるからだった。

彼の方は私に見覚えがないみたい。いや、男装しているから気づかれないのか。